三つめはこちら。
Death and readmissions after hospital discharge during
the December holiday period: cohort study
BMJ 2018;363:k4481http://dx.doi.org/10.1136/bmj.k4481
まもなく”その時期”ですので、くれぐれも何事もないようにお祈り申し上げます。
二つ目に挙げたスウェーデンでの心筋梗塞発症リスクと同様ですが、イベントと健康アウトカムを医療資源の観点からみているものです。カナダのオンタリオ州での急性期病院での死亡と再入院を12月のホリデーシーズンに着目して調査したというものです。
結果の要点はこちら:
14日以内で10万人の患者あたり、クリスマスホリデイシーズン前の退院に起因する外来受診のフォローが3千例少なくなり、26名の死亡、188入院、483救急対応の増加が起こることが示されました。
多くのプロフェッショナルはいろいろと犠牲にすることもある反面、その分尊重されるべき役割を果たされていることに感心している日々なので、こういった観点をどのように解決できるのか、ぜひ議論出来たら良いですよね。
過去の研究では、こんなことも言われていたんですね。驚きとともにご紹介しておきます。
”Some studies have found that patients discharged from hospital on Fridays or at
weekends are at increased risk of readmission”
来年も素晴らしい年を迎え、新たな知見、楽しい研究活動と研鑽に励めるよう頑張りたいと存じます。
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12/16/2018
ホリデイシーズンの心筋梗塞
Christmas 2018の二つ目はこちら
Christmas, national holidays, sport events, and time factors as triggers of acute myocardial infarction: SWEDEHEART observational study 1998-2013
BMJ 2018;363:k4811http://dx.doi.org/10.1136/bmj.k4811
スウェーデンの全国規模での心血管疾患レジストリデータ、nationwide Swedish Web System for Enhancement and Development of EvidenceBased Care in Heart Disease Evaluated According to Recommended Therapies (SWEDEHEART) registry
を用いた後ろ向き解析で心筋梗塞のイベント発生を調査したというもの。
ユニークな点は、発症時期をクリスマス、新年やイースター、サッカーワールドカップや欧州チャンピオンシップトーナメント、さらに冬季・夏季オリンピックといったスポーツイベント期間でリスクが増えているかを検討したもの。
ホリデイの2週間前後あるいはスポーツイベントは1年前の同じ時期をコントロール期間として設定して発症率比などを比較検証してあります。
過去の研究では、ほかの時期ファクターとして、ハリケーンや株価市場の暴落なども取り扱われたようです。
この研究からの結論は、
・クリスマスが心筋梗塞発症が増えている、クリスマスイブが最大のリスク時期
・イースター、スポーツイベントは心筋梗塞発症時期とリンクしていなかった
・75歳以上、糖尿病や冠動脈疾患を基礎疾患に持つ方でリスクが高い
・early morning, 月曜日が危険、、、、
となったそうです。
まもなくHoliday season, リスクの高かったクリスマスイブが近づいてきていますので健やかにお過ごしできますように。。。
Christmas, national holidays, sport events, and time factors as triggers of acute myocardial infarction: SWEDEHEART observational study 1998-2013
BMJ 2018;363:k4811http://dx.doi.org/10.1136/bmj.k4811
スウェーデンの全国規模での心血管疾患レジストリデータ、nationwide Swedish Web System for Enhancement and Development of EvidenceBased Care in Heart Disease Evaluated According to Recommended Therapies (SWEDEHEART) registry
を用いた後ろ向き解析で心筋梗塞のイベント発生を調査したというもの。
ユニークな点は、発症時期をクリスマス、新年やイースター、サッカーワールドカップや欧州チャンピオンシップトーナメント、さらに冬季・夏季オリンピックといったスポーツイベント期間でリスクが増えているかを検討したもの。
ホリデイの2週間前後あるいはスポーツイベントは1年前の同じ時期をコントロール期間として設定して発症率比などを比較検証してあります。
過去の研究では、ほかの時期ファクターとして、ハリケーンや株価市場の暴落なども取り扱われたようです。
この研究からの結論は、
・クリスマスが心筋梗塞発症が増えている、クリスマスイブが最大のリスク時期
・イースター、スポーツイベントは心筋梗塞発症時期とリンクしていなかった
・75歳以上、糖尿病や冠動脈疾患を基礎疾患に持つ方でリスクが高い
・early morning, 月曜日が危険、、、、
となったそうです。
まもなくHoliday season, リスクの高かったクリスマスイブが近づいてきていますので健やかにお過ごしできますように。。。
ファストフードの悪名返上
年の瀬にBMJ誌で特集:Christmas 2018が組まれていますので、そこから3回シリーズでピックアップしてお伝えします。最初はこちら。Food for Thoughtのいくつかある記事の一つから。
レストランでのお食事は、カロリーが気になる皆様にとっては、あのファストフード以上にカロリーをとってしまう可能性があるようです。通常時期のお話ですので、クリスマスや感謝祭のボリュームが増す時期は、ひょっとしたら年明けの目標がダイエットになる可能性を秘めているかもしれません。
研究デザインは、Brazil, China, Finland, Ghana, and Indiaから111のレストラン、ファストフード店の223の食事についてと、Finlandでは職員食堂からのデータも収集したトンこと。
BMJオンラインではvisualizationを用意しているようですのでご興味ある方はご覧ください。Restaurants are serving us a heavy meal Explore this visualisation to see the energy content
結果で特筆する点は、中国の食事カロリー量はアメリカの半分くらいであったこと、ガーナが意外に高いカロリー量であったこと、Regression modelでの結果は、フルサービスのレストランに比べてファストフードの食事の方が33%くらいカロリー量は抑えられる、となったようです。
日本人の食事量、カロリー量は米国の半分くらいといわれているのですが、ファストフード店とレストランでのボリューム、家での食事をカロリー、栄養価の面で、地中海食と同じくらい健康に良いかどうかなど検証してみたいです。
11/11/2018
生活習慣と就労・疾患への影響
Lancet姉妹誌の最新記事ですが、私自身また多くのサラリーワーカーにとって身に詰まる思いにさせられるものです(Lancet Public Health 2018;3: e545–54)。
UK, France, and Finlandからの参加者7万4千名の生活習慣と9日以上の病欠休暇との関連性を評価したもの。
結果サマリーは以下にまとまっているので引用させていただきます。
私なりの結論;元気に仕事を継続していく、生活していくためには、①タバコは吸わない、②適度な運動で肥満にならない、が最重要、次点でアルコールは控えめにたしなむ程度を心掛ける。当然の結論ですね。
そのためには、ストレスを抱えすぎる環境や家庭環境、人間関係や社会とのつながりも重要なんでしょうね。
UK, France, and Finlandからの参加者7万4千名の生活習慣と9日以上の病欠休暇との関連性を評価したもの。
結果サマリーは以下にまとまっているので引用させていただきます。
私なりの結論;元気に仕事を継続していく、生活していくためには、①タバコは吸わない、②適度な運動で肥満にならない、が最重要、次点でアルコールは控えめにたしなむ程度を心掛ける。当然の結論ですね。
そのためには、ストレスを抱えすぎる環境や家庭環境、人間関係や社会とのつながりも重要なんでしょうね。
アフリカの住居構造とマラリア対策
Lancet Planetary Health誌での記事にあった、住居構造と公衆衛生を題材にしたもの(Lancet Planet Health 2018;2: e498–508)。
サハラ以南に位置するガンビアの農村部に、5つのタイプの泥土の住宅で、4つは伝統的なデザインでドアの取り付けが不十分、一つは換気を改善するための窓を備えた斬新なデザインの住居を建て、それぞれの家に、1人の男性ボランティアが蚊帳ネットの下で眠り、蚊を室内の照明トラップで捕獲する、というもの。毎週別タイプの家屋を回って、居住者の快適さをアンケートで記録。気温、気圧を常時測定モニタリングし、Anopheles gambiaeの数と平均室温を評価したという社会?実験です。閉じた環境では夜中に気温が上昇してしまう環境と喚起されて快適だが、蚊の侵入を許してしまうリスクとのバランスをどうとるかという検証ですかね。
実際にはここで写真掲載した茅葺屋根住宅よりもしっかりしたもので、軒先の密閉・開閉構造と扉の立て付けの完全性、金属屋根の違いで5つのタイプを用意したというものらしく、
軒先の密閉性ときちんとフィットした扉、金属屋根のつくりが、快適性、蚊の侵入の点で最良であることが示されたというものでした。
熱帯地方、マラリアの危険のある地域、と遠い他国のこととしてではなく、
日本の高い建築技術と健康評価を他のアジア・アフリカ諸国のために貢献できるチャンスであり、将来の気候変動リスクに対する備えとして検討できるのではないでしょうか。
技術分野の融合を、グローバルレベルで考えさせられる記事でした。
サハラ以南に位置するガンビアの農村部に、5つのタイプの泥土の住宅で、4つは伝統的なデザインでドアの取り付けが不十分、一つは換気を改善するための窓を備えた斬新なデザインの住居を建て、それぞれの家に、1人の男性ボランティアが蚊帳ネットの下で眠り、蚊を室内の照明トラップで捕獲する、というもの。毎週別タイプの家屋を回って、居住者の快適さをアンケートで記録。気温、気圧を常時測定モニタリングし、Anopheles gambiaeの数と平均室温を評価したという社会?実験です。閉じた環境では夜中に気温が上昇してしまう環境と喚起されて快適だが、蚊の侵入を許してしまうリスクとのバランスをどうとるかという検証ですかね。
実際にはここで写真掲載した茅葺屋根住宅よりもしっかりしたもので、軒先の密閉・開閉構造と扉の立て付けの完全性、金属屋根の違いで5つのタイプを用意したというものらしく、
軒先の密閉性ときちんとフィットした扉、金属屋根のつくりが、快適性、蚊の侵入の点で最良であることが示されたというものでした。
熱帯地方、マラリアの危険のある地域、と遠い他国のこととしてではなく、
日本の高い建築技術と健康評価を他のアジア・アフリカ諸国のために貢献できるチャンスであり、将来の気候変動リスクに対する備えとして検討できるのではないでしょうか。
技術分野の融合を、グローバルレベルで考えさせられる記事でした。
SDGs achievements in 2017
以前から取り上げているSustainable Development Goals(SDGs)の健康関連の目標達成ですが、最近のLancetで2017年での達成具合を各国で評価していますのでご紹介します。(Lancet 2018 Nov 10th)
日本はTop10入りを逃していますが、
自国のことだけでなく、世界がどのような状況にあるのか、現状を知り、原因を探り、改善していくためにこういったレポートを定期的に概観し議論する、考えることを、もっと専門家のみだけではない場で、日本の中で様々な場で行われていくことを望みます。
各国政府、多くの企業もポリシーの一つにSDGへの貢献をうたってほしいものです。
日本はTop10入りを逃していますが、
自国のことだけでなく、世界がどのような状況にあるのか、現状を知り、原因を探り、改善していくためにこういったレポートを定期的に概観し議論する、考えることを、もっと専門家のみだけではない場で、日本の中で様々な場で行われていくことを望みます。
各国政府、多くの企業もポリシーの一つにSDGへの貢献をうたってほしいものです。
10/14/2018
環境汚染、気候変動と健康管理の国際イニシアティヴ
少し前に自然災害、特に気候変動である干ばつと死亡率、循環器、肺疾患による入院率との関連性を検証した記事をご紹介しましたが(気候変動と健康への影響の記事)、
それとも関連した観点での研究コンソーシアムのご紹介。
The Institute for Health Metrics and Evaluation (IHME) 、representatives from the US National Institute for Environmental Health Sciences, environmental non-governmental organisations, the UN Environment Programme, and major foundations
上記団体、政府機関などが協力して、”a new Initiative—the Global Burden of Disease (GBD)- Pollution and Health Initiative”を始めていこう、との計画をLancet姉妹誌上で紹介されています(Hu et al., Lancet Planetary Health 2018, DOI:https://doi.org/10.1016/S2542-5196(18)30189-X )。
太平洋の向こう側でもPM2.5が議論されていること、最も世界の工場からの被害を被るであろう日本がここに貢献できる期待を込めてご紹介しておきます。
それとも関連した観点での研究コンソーシアムのご紹介。
The Institute for Health Metrics and Evaluation (IHME) 、representatives from the US National Institute for Environmental Health Sciences, environmental non-governmental organisations, the UN Environment Programme, and major foundations
上記団体、政府機関などが協力して、”a new Initiative—the Global Burden of Disease (GBD)- Pollution and Health Initiative”を始めていこう、との計画をLancet姉妹誌上で紹介されています(Hu et al., Lancet Planetary Health 2018, DOI:https://doi.org/10.1016/S2542-5196(18)30189-X )。
太平洋の向こう側でもPM2.5が議論されていること、最も世界の工場からの被害を被るであろう日本がここに貢献できる期待を込めてご紹介しておきます。
自殺率の年次推移と性別 インドの例
Lancet姉妹誌からインドにおける死亡原因の上位、世界における10-30代の死亡原因の上位(2-3位)を占める自殺を取り扱った記事のご紹介(India State-Level Disease Burden Initiative Suicide Collaborators, Lancet Public Health 2018;3: e478–89)
喜ばしい結果は、1990年から2016年の推移に関して、女性の自殺率は減少を示していること、残念なことは、男性では過去からの推移変化は見られていない、世界の自殺率と比較してもインドの女性、男性では高い値を示していることである。
~Suiside death rate (SDR) in women was 2·1 times higher in India than the global average in 2016, and the observed-to-expected ratio was 2·74, ranging from 0·45 to 4·54 between the states. SDR in men was 1·4 times higher in India than the global average in 2016, with an observed-to-expected ratio of 1·31, ranging from 0·40 to 2·42 between the states. ~
翻って我が国の自殺率は決して低くなく、10万人あたり男性で25-40ほど、女性で10-15前後、といった値を示すことが全国統計などからわかっています(参照リンク)。隣の火事ではない状況です。これらの結果をLancet姉妹誌に掲載し、国策の必要性を訴える、awarenessを高める試みを進めている国を見習うべきではないでしょうか?人的リソースが国や人類発展の基礎であることから出産、乳幼児を守る健康管理と同じように、自殺による死亡はGlobal burdenである観点を持てるようにならないといけないのかもしれません。
お国柄の違いからかもしれませんが、そろそろ日本も統計を取る意味、活用する意味を政策をデザイン・実施するメンバーが理解する必要があるかと思います。so what?がない活動、人件費は税金がいくらあっても足りないのでは、と感じるこの頃です。
もう一つ特筆すべき点は、あのメリンダ&ビルゲイツ財団もファンドしている活動であること、世のお金持ちも目指したいただきたい姿勢ですね。
Funding: Bill & Melinda Gates Foundation; and Indian Council of Medical Research, Department of Health Research, Ministry of Health and Family Welfare, Government of India.
喜ばしい結果は、1990年から2016年の推移に関して、女性の自殺率は減少を示していること、残念なことは、男性では過去からの推移変化は見られていない、世界の自殺率と比較してもインドの女性、男性では高い値を示していることである。
~Suiside death rate (SDR) in women was 2·1 times higher in India than the global average in 2016, and the observed-to-expected ratio was 2·74, ranging from 0·45 to 4·54 between the states. SDR in men was 1·4 times higher in India than the global average in 2016, with an observed-to-expected ratio of 1·31, ranging from 0·40 to 2·42 between the states. ~
翻って我が国の自殺率は決して低くなく、10万人あたり男性で25-40ほど、女性で10-15前後、といった値を示すことが全国統計などからわかっています(参照リンク)。隣の火事ではない状況です。これらの結果をLancet姉妹誌に掲載し、国策の必要性を訴える、awarenessを高める試みを進めている国を見習うべきではないでしょうか?人的リソースが国や人類発展の基礎であることから出産、乳幼児を守る健康管理と同じように、自殺による死亡はGlobal burdenである観点を持てるようにならないといけないのかもしれません。
お国柄の違いからかもしれませんが、そろそろ日本も統計を取る意味、活用する意味を政策をデザイン・実施するメンバーが理解する必要があるかと思います。so what?がない活動、人件費は税金がいくらあっても足りないのでは、と感じるこの頃です。
もう一つ特筆すべき点は、あのメリンダ&ビルゲイツ財団もファンドしている活動であること、世のお金持ちも目指したいただきたい姿勢ですね。
Funding: Bill & Melinda Gates Foundation; and Indian Council of Medical Research, Department of Health Research, Ministry of Health and Family Welfare, Government of India.
9/30/2018
Genetic randomizationという考え方
前記事に続き手法として面白みを感じたのでご紹介。同じくBMJの最新記事です。
(Wootton et al., BMJ 2018)
UK Biobankに登録のある18万人を含む方々の遺伝的背景をランダム化割り付けし、その背景因子(BMI、性、年齢、血中コレステロールなど)と心血管代謝疾患の関連性を(原因効果(causal effect)という言い方をしています)をみたというもの。
遺伝的背景をそろえた状況で環境要因、BMIが疾患発現に影響する、との結論ですが、なんといってもGWASデータを使ったランダム化、といった手法。
今後の観察研究では同様に遺伝的背景をそろえた分析が必要になる、あるいは再解析する必要があるかもしれません。
(Wootton et al., BMJ 2018)
UK Biobankに登録のある18万人を含む方々の遺伝的背景をランダム化割り付けし、その背景因子(BMI、性、年齢、血中コレステロールなど)と心血管代謝疾患の関連性を(原因効果(causal effect)という言い方をしています)をみたというもの。
遺伝的背景をそろえた状況で環境要因、BMIが疾患発現に影響する、との結論ですが、なんといってもGWASデータを使ったランダム化、といった手法。
今後の観察研究では同様に遺伝的背景をそろえた分析が必要になる、あるいは再解析する必要があるかもしれません。
9/29/2018
Pragmatic randamized trial: 食事療法の効用
BMJ誌に方法論として昨今取り上げられているPragmatic trial designを用いた研究が取り上げられていたのでご紹介。(Astbury et al., BMJ 2018)
テーマ、目的は肥満患者を通常治療をした場合と食事制限(低カロリー食)にランダム割り付けして12か月観察したというもの。ミソは実臨床、リアルワールドでその他条件をあまり制限せずに結果がどうなるかを見たというところでしょうか。
詳細な結果は以下にまとまっているので貼り付けのみとしておきます。

わかりやすくPragmatic trial designについてまとまっている資料を見つけたのでこちらにもご紹介しておきます。(製薬協 医薬品評価委員会 データサイエンス部会資料)
Take home messageは薬剤だけではない様々な曝露因子にかかわる健康リサーチは、今後ますますリアルワールドデータが重要になっていく、ということでしょうか。
テーマ、目的は肥満患者を通常治療をした場合と食事制限(低カロリー食)にランダム割り付けして12か月観察したというもの。ミソは実臨床、リアルワールドでその他条件をあまり制限せずに結果がどうなるかを見たというところでしょうか。
詳細な結果は以下にまとまっているので貼り付けのみとしておきます。

わかりやすくPragmatic trial designについてまとまっている資料を見つけたのでこちらにもご紹介しておきます。(製薬協 医薬品評価委員会 データサイエンス部会資料)
Take home messageは薬剤だけではない様々な曝露因子にかかわる健康リサーチは、今後ますますリアルワールドデータが重要になっていく、ということでしょうか。
9/15/2018
英国の高齢化社会の未来
モデルや手法は実際に自身でさわったことが無いものなのですが、その言わんとしているところに興味を覚えたのでご紹介させていただきます。
最近のLancet姉妹誌から、20年後の英国社会の高齢者の実態を予想したというものです。
The Population Ageing and Care Simulation (PACSim) modelを開発し縦断的な高齢者の介護必要性の程度、痴呆、循環器疾患についてシミュレーションを試みたという報告です。(Kingston et al., Lancet Public Health 2018;3: e447–55、Published Online
August 30, 2018)
シミュレーション結果としては、2015年から20年後の英国では介護を必要としない高齢者が増え得る一方、要介護者、軽度から重度もそれおぞれ、特に85歳以上のpopulationで増えることが予想されるということだそうです。(下図、同文献からの引用)
はてさて、日本は高齢者人口だけではなくその質を評価、推定する研究はどのように進んでいるのでしょうか?政策決定もEvidence-basedで行った方がより精度ある成功につながる施策になることが容易に推察されます。
最近のLancet姉妹誌から、20年後の英国社会の高齢者の実態を予想したというものです。
The Population Ageing and Care Simulation (PACSim) modelを開発し縦断的な高齢者の介護必要性の程度、痴呆、循環器疾患についてシミュレーションを試みたという報告です。(Kingston et al., Lancet Public Health 2018;3: e447–55、Published Online
August 30, 2018)
シミュレーション結果としては、2015年から20年後の英国では介護を必要としない高齢者が増え得る一方、要介護者、軽度から重度もそれおぞれ、特に85歳以上のpopulationで増えることが予想されるということだそうです。(下図、同文献からの引用)
はてさて、日本は高齢者人口だけではなくその質を評価、推定する研究はどのように進んでいるのでしょうか?政策決定もEvidence-basedで行った方がより精度ある成功につながる施策になることが容易に推察されます。
Sustainable Development Goalsへの注目
別のところで簡単に触れましたが今回も御紹介まで。
Lancet Global Healthでの寄稿ですが、まとまった記事になっていましたので興味があれば是非御一読を。
High-quality health systems in the Sustainable Development Goals era: time for a revolution
Lancet Glob Health 2018
Published Online September 5, 2018
Lancet Global Healthでの寄稿ですが、まとまった記事になっていましたので興味があれば是非御一読を。
High-quality health systems in the Sustainable Development Goals era: time for a revolution
Lancet Glob Health 2018
Published Online September 5, 2018
糖質制限、低炭水化物ダイエットの功罪
若い女性や中年の方々にとっての体重管理は現代病の一つとして、以前にも取り上げたテーマ(2018年1月,2017年7月の記事)ですが、今回も最近のダイエット療法の一つとして注目を浴びている、糖質制限食、または低炭水化物食といわれる食事の死亡への影響を検証しようとした論文が最近のLancet姉妹誌に報告されていました(Seidelmann et al., Lancet Public Health 2018;
3: e419–28).
背景にあるのは、実際脂肪分の摂取を減らす、糖質制限することが短期的な体重低下をもたらす、実感がわくからかもしれない。一方で、国際的な研究においても下記の記載のとおり高炭水化物食が死亡率の増加に寄与するとの報告もされている。
~the 2017 Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study, of individuals from 18 countries across five continents (n=135 335, median follow up 7·4 years, 5796 deaths), reported that high carbohydrate intake was associated with increased risk of mortality.
このような背景から、USの4地域の動脈硬化症リスクを検証する前向きコホートthe Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) study (between 1987 and 1989)に登録された、15 428 adults aged 45–64 years,に関して食事と脂肪との関係を検証したというもの。
平均25年間の追跡の結果からは、下図でご覧出来るようにU-shaped、低炭水化物食も高炭水化物食もどちらも死亡ハザードは高くなることがわかった。
エネルギー源が炭水化物から動物性脂肪、あるいは植物性脂肪に変えることは、それぞれの死亡ハザードを
animal-derived fat or protein (1·18, 95%CI:1·08–1·29)
plant-based (0·82, 95%CI:0·78–0·87).
という結果になるとのこと。
何事もほどほどですな。
3: e419–28).
背景にあるのは、実際脂肪分の摂取を減らす、糖質制限することが短期的な体重低下をもたらす、実感がわくからかもしれない。一方で、国際的な研究においても下記の記載のとおり高炭水化物食が死亡率の増加に寄与するとの報告もされている。
~the 2017 Prospective Urban Rural Epidemiology (PURE) study, of individuals from 18 countries across five continents (n=135 335, median follow up 7·4 years, 5796 deaths), reported that high carbohydrate intake was associated with increased risk of mortality.
- Ref. Dehghan M
- Mente A
- Zhang X
- et al.
Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study.
Lancet. 2017; 390: 2050-2062このような背景から、USの4地域の動脈硬化症リスクを検証する前向きコホートthe Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) study (between 1987 and 1989)に登録された、15 428 adults aged 45–64 years,に関して食事と脂肪との関係を検証したというもの。
平均25年間の追跡の結果からは、下図でご覧出来るようにU-shaped、低炭水化物食も高炭水化物食もどちらも死亡ハザードは高くなることがわかった。
エネルギー源が炭水化物から動物性脂肪、あるいは植物性脂肪に変えることは、それぞれの死亡ハザードを
animal-derived fat or protein (1·18, 95%CI:1·08–1·29)
plant-based (0·82, 95%CI:0·78–0·87).
という結果になるとのこと。
何事もほどほどですな。
9/02/2018
肺炎球菌ワクチンupdate
小さな子供やお年寄りが身近にいる方はなじみのあるワクチンかもしれません。
肺炎球菌、という髄膜炎を起こして死に至ったり、敗血症を起こす原因菌に対する予防ワクチンとして有名なプレベナーによって、現代の多くの子供たちの感染が予防されています。(参考:肺炎球菌感染症 メルクマニュアル)
しかし、最近のLancet姉妹誌に近年の肺炎球菌ワクチンのターゲット菌株を逃れた血清型の出現、抗菌薬耐性株の出現をアラートする記事が出てきていました。(Ouldali et al., Lancet Infectious Diseases 2018) 紹介記事はこちら
フランスで予防ワクチン、プレベナー13価(PCV13)が導入された数年まで(2001年から2016年)までの肺炎球菌感染症、髄膜炎を追跡したというもの。PCV13導入は2014年12月からで、予想通りそれまでの髄膜炎発症率は半減しワクチンの効果が現れました。しかしながら、その後2016年に入るとペニシリン耐性を持つPCV13が対象としない株、24F株が出現してきたということです。
この株による侵襲性肺炎球菌感染症は日本でも観察されているとのこと。今のところ米国ではこの株の特異な変化はないようですが、引き続き注意が必要です。
24F株に限らず、PCV13がもたらした恩恵は計り知れませんが、一方で、PCV13で漏れる菌株は近年増加傾向(参考UKデータ)にあり、新たな対策が必要になってきます。
製薬会社も次世代ワクチンを開発中ですが、今回の24F株やその他の菌株に対するワクチン開発、対照株の選択だけでなく、菌株選択に頼らない予防法の開発はまだまだ必要との認識ができました。同じようにインフルエンザ予防も投資効果を含め、予防法の戦略を見直すべき時が近づいていると感じます。
世界の銃器犯罪
日本という平和な国に生まれ、生活していることをこういう記事を見ると感謝しつつ、
世界はまだまだ善くして行ける、していかなくてはいけないことを我々の世代、未来の世代に語っていかなくてはいけません。
JAMAの最新記事で世界195か国の1990年~2016年の間の銃器・武器犯罪や戦争による死亡率を総覧した記事だ掲載されています(JAMA. 2018;320(8):792-814. doi:10.1001/jama.2018.10060)。メディアも用意されていてわかりやすかったのでこちらも参照ください。(multimedia video)
明らかな偏りのある現実を世界各国は認識すべきかと思います。
2016年の一年間で251 000 (95% uncertainty interval [UI], 195 000-276 000)が銃器犯罪や戦争により死亡していると推定され, それらのなんと50.5% (95% UI, 42.2%-54.8%)は6つの国:Brazil, United States, Mexico, Colombia, Venezuela, and Guatemalaが占めているということです。
地図上で表すともっと明らかかと思いますが、北米南米に銃器の流通ルートが存在していること、日常にあふれていることが想像されます。
先進国、という言葉の意味するところはこういった犯罪、それにける健康被害においても
世界の先端、リードを担っていくべきかと思いますが、米国はその意味では非常に後進国であるといわなければなりません。
一方で、1990年から2016年の間の変化は大方減少に向かっていることは世界はより良くなっているとみることもできます。政治紛争や経済不安が起こると社会変化がこういった武器犯罪などに影響を与えることも類推されます。低い武器犯罪率を達成できている社会の原因を知り、自身の国に取り入れる努力を各国の政治家、健康医療に携わるものが学ぶべきと思います。
今回取り上げたテーマに関しては日本は誇りをもってお手本となる社会インフラや銃器管理に関して世界に発信できるのではないでしょうか?
世界はまだまだ善くして行ける、していかなくてはいけないことを我々の世代、未来の世代に語っていかなくてはいけません。
JAMAの最新記事で世界195か国の1990年~2016年の間の銃器・武器犯罪や戦争による死亡率を総覧した記事だ掲載されています(JAMA. 2018;320(8):792-814. doi:10.1001/jama.2018.10060)。メディアも用意されていてわかりやすかったのでこちらも参照ください。(multimedia video)
明らかな偏りのある現実を世界各国は認識すべきかと思います。
2016年の一年間で251 000 (95% uncertainty interval [UI], 195 000-276 000)が銃器犯罪や戦争により死亡していると推定され, それらのなんと50.5% (95% UI, 42.2%-54.8%)は6つの国:Brazil, United States, Mexico, Colombia, Venezuela, and Guatemalaが占めているということです。
地図上で表すともっと明らかかと思いますが、北米南米に銃器の流通ルートが存在していること、日常にあふれていることが想像されます。
先進国、という言葉の意味するところはこういった犯罪、それにける健康被害においても
世界の先端、リードを担っていくべきかと思いますが、米国はその意味では非常に後進国であるといわなければなりません。
一方で、1990年から2016年の間の変化は大方減少に向かっていることは世界はより良くなっているとみることもできます。政治紛争や経済不安が起こると社会変化がこういった武器犯罪などに影響を与えることも類推されます。低い武器犯罪率を達成できている社会の原因を知り、自身の国に取り入れる努力を各国の政治家、健康医療に携わるものが学ぶべきと思います。
今回取り上げたテーマに関しては日本は誇りをもってお手本となる社会インフラや銃器管理に関して世界に発信できるのではないでしょうか?
7/21/2018
ポケモンGoと注意欠陥・多動性障害
最近は大人のADHDも焦点があたるようになってきましたが、現代の社会環境の変化、ソーシャルネットワークの発達が人間社会、健康にどのような影響を及ぼすか、といった視点からの提言、研究のご紹介です。
Ra et al., JAMA. 2018;320(3):255-263. doi:10.1001/jama.2018.8931,”Association of Digital Media Use With Subsequent Symptoms of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Among Adolescents”
紹介記事も併せてお読みください。
対象は15-16歳のLA在住の少年少女で、ADHDの症状のない高校生をその後24か月間追跡したというもの。ソーシャルメディへのアクセス、使用頻度に応じてスケール化しその後のADHD関連症状が現れるかどうかを評価したもの。
結果としては一日に複数回のメディアアクセスする子供たちはその後にADHD症状を発症するOddsが高くなる、OR, 1.11; 95% CI, 1.06-1.16、調整後も adjustment (OR, 1.10; 95% CI, 1.05-1.15という結果です。
メディアの種類の影響の違いや、頻度でなく時間では?といった疑問もわくが、それ以上にではなぜ影響するのか、そのメカニズムと治療法、予防法の探索が本来の命題のはずです。
さらなる熟考が求められる研究テーマですね。
調べるついでに引っかかってきましたが、トーマスエジソンやベンジャミンフランクリン、JFケネディや坂本龍馬までADHDではなかったかといわれているようです。
アメリカ人に圧倒的に多いこと、それに比べてフランス人で圧倒的に少ないなど、まだまだ未知な個性といってもいいものではないかと思います。
Ra et al., JAMA. 2018;320(3):255-263. doi:10.1001/jama.2018.8931,”Association of Digital Media Use With Subsequent Symptoms of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Among Adolescents”
紹介記事も併せてお読みください。
対象は15-16歳のLA在住の少年少女で、ADHDの症状のない高校生をその後24か月間追跡したというもの。ソーシャルメディへのアクセス、使用頻度に応じてスケール化しその後のADHD関連症状が現れるかどうかを評価したもの。
結果としては一日に複数回のメディアアクセスする子供たちはその後にADHD症状を発症するOddsが高くなる、OR, 1.11; 95% CI, 1.06-1.16、調整後も adjustment (OR, 1.10; 95% CI, 1.05-1.15という結果です。
メディアの種類の影響の違いや、頻度でなく時間では?といった疑問もわくが、それ以上にではなぜ影響するのか、そのメカニズムと治療法、予防法の探索が本来の命題のはずです。
さらなる熟考が求められる研究テーマですね。
調べるついでに引っかかってきましたが、トーマスエジソンやベンジャミンフランクリン、JFケネディや坂本龍馬までADHDではなかったかといわれているようです。
アメリカ人に圧倒的に多いこと、それに比べてフランス人で圧倒的に少ないなど、まだまだ未知な個性といってもいいものではないかと思います。
仕事のストレスと代謝疾患の死亡への影響
最近のLancet姉妹誌Diabetes Endocrinologyからの記事紹介です(Kivimäki et al., Lancet Diabetes Endcrinology 2018, "Work stress and risk of death in men and women with andwithout cardiometabolic disease: a multicohort study")。
フィンランド、フランス、スウェーデン、UKからの1985-2002年の健康、労働に関するコンソーシアム:IPD-Work Consortiumが主導したmulticohort研究の報告。こういった取り組みをしているあたりがさすが欧州だな、というところです。
仕事におけるストレスの有無を job demand-controlと努力に対する報酬の側面で測定する調査票によるスコア化し有無判定している。validationされた調査票を使用してその質を担保してあります。
高血圧、脳梗塞、心疾患、糖尿病などの疾患背景情報の収集、喫煙歴やアルコール摂取などの生活習慣情報を踏まえ、仕事のストレスの有無がその後の死亡率に与える影響を評価したもの。
結果はクリアで、背景疾患に代謝疾患を持つ男性が仕事のストレスにさらされると死亡率が高まる、死亡のリスクが高まる、hazard ratio [HR] 1·68, 95% CI 1·19–2·35、ことが示されました。喫煙者はさらにリスク高、言わずもがなです。
DOI: https://doi.org/10.1016/S2213-8587(18)30140-2からの引用
意外ではないかもしれませんが、女性の方では明確には死亡リスクの違いが現れなかったことです。ストレスに対する対応の方法に、性差があること、女性は社会・対外環境のストレスに耐性を持っているのかもしれません。
フィンランド、フランス、スウェーデン、UKからの1985-2002年の健康、労働に関するコンソーシアム:IPD-Work Consortiumが主導したmulticohort研究の報告。こういった取り組みをしているあたりがさすが欧州だな、というところです。
仕事におけるストレスの有無を job demand-controlと努力に対する報酬の側面で測定する調査票によるスコア化し有無判定している。validationされた調査票を使用してその質を担保してあります。
高血圧、脳梗塞、心疾患、糖尿病などの疾患背景情報の収集、喫煙歴やアルコール摂取などの生活習慣情報を踏まえ、仕事のストレスの有無がその後の死亡率に与える影響を評価したもの。
結果はクリアで、背景疾患に代謝疾患を持つ男性が仕事のストレスにさらされると死亡率が高まる、死亡のリスクが高まる、hazard ratio [HR] 1·68, 95% CI 1·19–2·35、ことが示されました。喫煙者はさらにリスク高、言わずもがなです。
DOI: https://doi.org/10.1016/S2213-8587(18)30140-2からの引用
意外ではないかもしれませんが、女性の方では明確には死亡リスクの違いが現れなかったことです。ストレスに対する対応の方法に、性差があること、女性は社会・対外環境のストレスに耐性を持っているのかもしれません。
SDG 3:2030年までに達成を目指す持続可能な発展のためのゴール
簡単にご紹介だけ。昨今ビジネスの世界、政府関係のアジェンダで必ず取り上げられるようになってきたSustainable Development Goalsについて、企業や個人でできることを考え実行する機会を作っていけることを願います。グローバル社会の市民の一員としての責務を果たしていきたいです。
サイトリンクだけつけさせていただきます。
国連の日本語サイト:http://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/
WHOのSDG3 (健康保険領域):
http://www.who.int/sdg/targets/en/
サイトリンクだけつけさせていただきます。
国連の日本語サイト:http://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/
WHOのSDG3 (健康保険領域):
http://www.who.int/sdg/targets/en/
6/30/2018
アルコールの弊害
最近のLancet誌で取り上げられた、私たちにも身近な、決して現在健康な方にも関係するお話。アルコールの摂取量と健康、死亡や心血管疾患イベントアウトカムリスクを評価しようとしたもの(Wood et al., Lancet 2018; 391: 1513–23)です。
各国のアルコール摂取のガイドラインでは様々な規定や推奨基準となっており、
さて、この論文では科学的エビデンスに基づいてどの程度のアルコール摂取が実際の臨床アウトカムに影響するかを研究したもの。
データソースはUKのEmerging risk factor collaborationを運営している団体の前向きコホートデータとUKのBiobankから、現役アルコール消費者について、摂取量をきちんと把握できる方について、追跡し、週のアルコール摂取量100gを基準にそれ以上の消費量カテゴリーのハザードをCox regressionモデルで評価を行った。
結果は明々白々、週に100g以上のアルコール摂取は害悪以外にないという現実的な結果でした。嗚呼(涙)。
私の場合、赤のドットになるので、毎年2年弱ほど人生を失ってしまっています。仮に20歳から60歳まで毎年2年ずつ失うとして80歳分早く死んでしまううことになる。ひょっとしたら別の場所でも議論されていますが、本当は人間は160歳か200歳くらいまで寿命の上限があって、そこからさまざまな害悪?により数十年単位で失ってしまって今の80歳、90歳で全うしているのが真実なのかもしれません。
当然のことながら依存症や極度の飲みすぎは多くの方は容認できないと思いますが、一方で、多くの方がアルコールがコミュニケーションやPsychologicalな一縷の幸せを、幸福な時間を享受していることも忘れたくありません。
各国のアルコール摂取のガイドラインでは様々な規定や推奨基準となっており、
米国では、例えば男性で一週間あたり196 g (およそ 11杯のグラスワインか11パイントのビール)
、女性で 98 g を推奨している。つまりこれがあるk-るによるリスク低減の上限。
カナダやスウェーデンも同程度。だがイタリア、ポルトガル、スペインではこれが50%程度高い=1.5倍のアルコール摂取を容認している。一方でUKではUSの半分程度としているそうだ。残念ながら日本の基準は不明ですが、自身の場合にはラテン民族と同程度の基準であってほしい、今日この頃です。さて、この論文では科学的エビデンスに基づいてどの程度のアルコール摂取が実際の臨床アウトカムに影響するかを研究したもの。
データソースはUKのEmerging risk factor collaborationを運営している団体の前向きコホートデータとUKのBiobankから、現役アルコール消費者について、摂取量をきちんと把握できる方について、追跡し、週のアルコール摂取量100gを基準にそれ以上の消費量カテゴリーのハザードをCox regressionモデルで評価を行った。
結果は明々白々、週に100g以上のアルコール摂取は害悪以外にないという現実的な結果でした。嗚呼(涙)。
40歳の人を基準にぞの後の残存する人生からの失われる時間推定したのが下の図。
私の場合、赤のドットになるので、毎年2年弱ほど人生を失ってしまっています。仮に20歳から60歳まで毎年2年ずつ失うとして80歳分早く死んでしまううことになる。ひょっとしたら別の場所でも議論されていますが、本当は人間は160歳か200歳くらいまで寿命の上限があって、そこからさまざまな害悪?により数十年単位で失ってしまって今の80歳、90歳で全うしているのが真実なのかもしれません。
当然のことながら依存症や極度の飲みすぎは多くの方は容認できないと思いますが、一方で、多くの方がアルコールがコミュニケーションやPsychologicalな一縷の幸せを、幸福な時間を享受していることも忘れたくありません。
6/16/2018
ホスピスケアと最期の時の迎え方
USでは2000年時に23%だったホスピス(終末期緩和ケア)利用者が2014年には48%にまで増えている一方、US公的保険Medicareが規定するホスピス利用方針として、疾患治療は行わないよう設けています。おそらく費用対効果・レギュラトリーサイエンスの観点からかと思われます。そのためか、死の最後の3日間までホスピス利用しない方々は2000年の22%から2009年の28%と増加傾向を示しているようです。このホスピス利用期間の短縮が最期の時のQoLを低下させたり、不適当な痛みにつながっていないか、患者さんの訴えを無視するような処置になってないか倫理的な問題ともなっています。特に週に3回の血液透析を必要とするESRD末期腎臓病患者さんにとってその血液透析の治療とホスピス利用が密接に関係しているようです。
そこで今回ご紹介する論文は、保険財政の観点で制限されるポリシーが、果たして正しいのかどうかを、ホスピス利用期間と最期の期間にかかる医療資源と費用との関係性を、特に血液透析患者さんに着目して調べてみたという論文です。(Wachterman et al., JAMA Internal Medicine 2018) 興味深い紹介記事も出ていたので合わせてご紹介。
2000年から2014年の間に亡くなられた129万人の血液透析患者のうち、メディケア被保険者の77万人を対象に、ホスピス利用期間と最期の1か月間の入院、ICUあるいは集中治療の実施、病院内(加療中の)死亡そして医療費を比べたもの。
77万人のうちホスピス利用者はたった20%(他の終末期疾患と比べて低い)、しかもその40%以上が最期の時のほんの3日間以下の利用であった。透析治療を受け、終末期ケアの状態でありながら60万人、8割の方は緩和ケアなく亡くなっているという現実が示されました。
また、今回この論文の着目点として、最後の3日以内のホスピス利用は、その最後の1か月間の病院での死亡、集中治療の必要性はホスピス利用しない人に比べ低下していたが、入院・ICU利用率はホスピスを利用しない人と変わらず、その治療にかかる費用も変わらないことが示されています。一方でより長くホスピス滞在していた方々、特に2週間、あるいはそれ以上の滞在者の医療費は顕著に低く収まっているという結果が示されました。
解釈は非常に困難かもしれませんが、単純に医療費だけで考えた場合、最期を迎える人のQOLを高く維持し、医療費を低く抑える仕組みが活用されてもよいのかと考えます。
超高齢化社会を迎え、透析患者の著しい増加を見る先進諸国では喫緊の課題として医療政策でも検討されるべきではないでしょうか?
そこで今回ご紹介する論文は、保険財政の観点で制限されるポリシーが、果たして正しいのかどうかを、ホスピス利用期間と最期の期間にかかる医療資源と費用との関係性を、特に血液透析患者さんに着目して調べてみたという論文です。(Wachterman et al., JAMA Internal Medicine 2018) 興味深い紹介記事も出ていたので合わせてご紹介。
2000年から2014年の間に亡くなられた129万人の血液透析患者のうち、メディケア被保険者の77万人を対象に、ホスピス利用期間と最期の1か月間の入院、ICUあるいは集中治療の実施、病院内(加療中の)死亡そして医療費を比べたもの。
77万人のうちホスピス利用者はたった20%(他の終末期疾患と比べて低い)、しかもその40%以上が最期の時のほんの3日間以下の利用であった。透析治療を受け、終末期ケアの状態でありながら60万人、8割の方は緩和ケアなく亡くなっているという現実が示されました。
また、今回この論文の着目点として、最後の3日以内のホスピス利用は、その最後の1か月間の病院での死亡、集中治療の必要性はホスピス利用しない人に比べ低下していたが、入院・ICU利用率はホスピスを利用しない人と変わらず、その治療にかかる費用も変わらないことが示されています。一方でより長くホスピス滞在していた方々、特に2週間、あるいはそれ以上の滞在者の医療費は顕著に低く収まっているという結果が示されました。
解釈は非常に困難かもしれませんが、単純に医療費だけで考えた場合、最期を迎える人のQOLを高く維持し、医療費を低く抑える仕組みが活用されてもよいのかと考えます。
超高齢化社会を迎え、透析患者の著しい増加を見る先進諸国では喫緊の課題として医療政策でも検討されるべきではないでしょうか?
赤毛のアンの悪性黒色腫(メラノーマ)リスク
マウス実験のころになじみのあったメラノコルチン受容体の遺伝子バリアントと、悪性黒色腫のリスクを男女で比較したという報告が最近のJAMA姉妹誌に登場していたのでご紹介します。(Wendt et al., JAMA Dermatology 2018)
ヒトの髪の毛の色や肌の色はメラニン合成をつかさどる酵素かその合成を制御するメラノコルチンとその受容体の遺伝子バリアントで違っているとされており、また加齢の影響を受けることは世界中の人々の観察から周知の事実である。
今回はメラノコルチン受容体の遺伝子バリアントの違いと性別がメラノーマのリスクに影響するかをケースコントロールスタディで検証したというもの。オーストリア、ウィーン大学病院からの報告。
結果は、女性のMC1Rハイリスクバリアントが有意にメラノーマリスクを示し、部位別のしわやそばかす(シミ)、太陽日射の影響なども考慮してもその遺伝子バリアントと性別の背景の影響が認められたというものであった。その理由には性ホルモンがメラニン合成に影響をしているためであろうとのことでした。
個人的に驚いたのが、MC1Rの遺伝バリアントは80以上も知られており、そのことが肌の色や髪の毛の色のバラエティになっていることと、意外だったのは、そのバリアントだけでは説明できない髪の毛の色の遺伝形質があることでした。まだまだ知らないことが多くあり、人種の中のバリアントがわかりやすい形で表れている遺伝子バリアントと疾患の感受性を知ることができるいいモデルになるのかと想像しました。
ヒトの髪の毛の色や肌の色はメラニン合成をつかさどる酵素かその合成を制御するメラノコルチンとその受容体の遺伝子バリアントで違っているとされており、また加齢の影響を受けることは世界中の人々の観察から周知の事実である。
今回はメラノコルチン受容体の遺伝子バリアントの違いと性別がメラノーマのリスクに影響するかをケースコントロールスタディで検証したというもの。オーストリア、ウィーン大学病院からの報告。
結果は、女性のMC1Rハイリスクバリアントが有意にメラノーマリスクを示し、部位別のしわやそばかす(シミ)、太陽日射の影響なども考慮してもその遺伝子バリアントと性別の背景の影響が認められたというものであった。その理由には性ホルモンがメラニン合成に影響をしているためであろうとのことでした。
個人的に驚いたのが、MC1Rの遺伝バリアントは80以上も知られており、そのことが肌の色や髪の毛の色のバラエティになっていることと、意外だったのは、そのバリアントだけでは説明できない髪の毛の色の遺伝形質があることでした。まだまだ知らないことが多くあり、人種の中のバリアントがわかりやすい形で表れている遺伝子バリアントと疾患の感受性を知ることができるいいモデルになるのかと想像しました。
5/20/2018
腸内フローラと疾病リスク
JAMA誌の紹介記事から(Komaroff, JAMA, 2018)、昨今の免疫系学会でのトピックである、腸内細菌と宿主への影響、関与する免疫系(Th17細胞など)とその疾病への影響を紹介している。
主に代謝疾患、動脈硬化症に着目しその機序、関連症状(高血圧、炎症、脂質代謝など)と治療法の具体性について議論しているが、一般の人にとっても身近で、すぐできそうな健康ニュースです。
腸内細菌叢(フローラ)の状況によって影響が言われていること:
主に代謝疾患、動脈硬化症に着目しその機序、関連症状(高血圧、炎症、脂質代謝など)と治療法の具体性について議論しているが、一般の人にとっても身近で、すぐできそうな健康ニュースです。
腸内細菌叢(フローラ)の状況によって影響が言われていること:
- 摂取する食事の消化吸収に影響し、肥満のリスクを高める
- 酪酸産生菌より酢酸産生菌はインスリン抵抗性を惹起することによる2型糖尿病発症リスクを高める(上記二つの影響に関する論文JAMA2017)
- 胆汁酸産生を抑制し、その結果LDLコレステロール値を高める=高脂血症、高コレステロール血症
- 高ナトリウム食による高血圧にTh17細胞系の関与があり、腸内細菌の関与が疑われている(関連論文Nature 2017) (この発見以外でした!)
- 炎症の誘発、血管内皮細胞の機能悪化
- プラーク内の泡沫細胞を活性化させるtrimethylamine N-oxide (TMAO)の前駆物質をコリンやクレアチニンから産生する
ダウン症の出生前診断と判断
JAMA誌のコメント記事に、表題のような、ダウン症の出生前診断とその後の中絶について、オハイオ州で禁じる法律が成立したことを伝える記事がありました(Reingold et al., JAMA, 2018)。
妊産婦のご家族や、これから子供を持ちたい方以外にはあまりピンと来ないかもしれませんが、少なくない方々にとってこういった遺伝性疾患(高い精度で予測できる診断、検査の確立された疾患)と、それに伴う社会の視点(優生と言って差し支えないでしょうか)のバランスをとる=議論し続けていく、ということは、今後もダウン症に限らず必要なことかと思います。
米国の他の州(文中から、Indiana, Louisiana, and North Dakota 州)でも同様の法律、ダウン症に限らず遺伝子疾患による中絶禁止の法律が存在(あるいは提案中)していること、このオハイオ州の法律は連邦からは差し止めの判断がされたとのことです。
ダウン症の現状:
米国では700人に一人の確率でダウン症を発症、妊婦の年齢はそのリスクを上げることが知られています。認知機能に障害がありますが、その影響はさほど大きくないようです。ひと昔前までの生命予後の悪さは大幅に改善され、働く環境、生活をする環境も整えられてきました。
研究論文の紹介ではありませんが、医科学の発展だけを追及してはいけない点、常にこういった応用における議論を考慮していく必要性を感じさせられました。
妊産婦のご家族や、これから子供を持ちたい方以外にはあまりピンと来ないかもしれませんが、少なくない方々にとってこういった遺伝性疾患(高い精度で予測できる診断、検査の確立された疾患)と、それに伴う社会の視点(優生と言って差し支えないでしょうか)のバランスをとる=議論し続けていく、ということは、今後もダウン症に限らず必要なことかと思います。
米国の他の州(文中から、Indiana, Louisiana, and North Dakota 州)でも同様の法律、ダウン症に限らず遺伝子疾患による中絶禁止の法律が存在(あるいは提案中)していること、このオハイオ州の法律は連邦からは差し止めの判断がされたとのことです。
ダウン症の現状:
米国では700人に一人の確率でダウン症を発症、妊婦の年齢はそのリスクを上げることが知られています。認知機能に障害がありますが、その影響はさほど大きくないようです。ひと昔前までの生命予後の悪さは大幅に改善され、働く環境、生活をする環境も整えられてきました。
研究論文の紹介ではありませんが、医科学の発展だけを追及してはいけない点、常にこういった応用における議論を考慮していく必要性を感じさせられました。
5/06/2018
ビタミンDの抗発癌の効用:日本人データ
最新のBMJ誌に日本からの報告、国立がん研究センターの多目的コホートからの報告があったのでご紹介します(Budhathoki et al., BMJ, 2018)。
ビタミンDの充足(体内血中濃度)、適切な太陽照射ががん細胞の増殖を抑制したり、発癌を抑えるということが動物実験や人の観察研究でも示唆されてきていますが、今回この日本人コホートでは、40歳以上の多目的コホートに登録、血液サンプルを保管された方々のなかで、最終的に3301名の発癌患者(ケース)とそのランダムに選んだコントロール4044名の方で、血中ビタミンD濃度と発癌リスクを比較したというもの。
論文中記載ではNested case cohort studyとあるので、上記のサブコホートをコントロールとしてとっていないし、サブコホート内でケースが発生しているのでどのような比較をおこなったか詳細は不明である。
血中ビタミンD濃度を四分位に分けて、最低のものをリファレンスに置いた比較で、がん全体の発症は、ビタミンD濃度が高いと有意に抑えられることを示したが、各部位がんの発癌リスクでは肝臓のみ有意な抑制ハザードを示しその他のがん(過去の報告で言われてきた大腸がん、前立腺がんや肺がんなど)は違いがみられなかった。
(国がんセンターHPからの引用)
ベースライン時のビタミンD濃度はその後の生活の中でどのような変化を示すのか(この研究ではベースラインのみ)、各被験者の追跡期間の違いは補正されているか、遺伝的背景(ビタミンD変換酵素や受容体などのSNPs)をもっと探索してもよい、十分な参加者がいるコホートなので単純にNested case control studyでの実施を検討できたのではないか、などいろいろと突っ込みどころは残るが、これまでアジア人でのデータがなかった、その他の部位がんデータがなかったところに一石は投じることができたものになっている。
ビタミンDの充足(体内血中濃度)、適切な太陽照射ががん細胞の増殖を抑制したり、発癌を抑えるということが動物実験や人の観察研究でも示唆されてきていますが、今回この日本人コホートでは、40歳以上の多目的コホートに登録、血液サンプルを保管された方々のなかで、最終的に3301名の発癌患者(ケース)とそのランダムに選んだコントロール4044名の方で、血中ビタミンD濃度と発癌リスクを比較したというもの。
論文中記載ではNested case cohort studyとあるので、上記のサブコホートをコントロールとしてとっていないし、サブコホート内でケースが発生しているのでどのような比較をおこなったか詳細は不明である。
血中ビタミンD濃度を四分位に分けて、最低のものをリファレンスに置いた比較で、がん全体の発症は、ビタミンD濃度が高いと有意に抑えられることを示したが、各部位がんの発癌リスクでは肝臓のみ有意な抑制ハザードを示しその他のがん(過去の報告で言われてきた大腸がん、前立腺がんや肺がんなど)は違いがみられなかった。
(国がんセンターHPからの引用)
ベースライン時のビタミンD濃度はその後の生活の中でどのような変化を示すのか(この研究ではベースラインのみ)、各被験者の追跡期間の違いは補正されているか、遺伝的背景(ビタミンD変換酵素や受容体などのSNPs)をもっと探索してもよい、十分な参加者がいるコホートなので単純にNested case control studyでの実施を検討できたのではないか、などいろいろと突っ込みどころは残るが、これまでアジア人でのデータがなかった、その他の部位がんデータがなかったところに一石は投じることができたものになっている。
閉経年齢と食事の影響
最近のBMJ関連誌から、表題の通り女性の閉経年齢とそれまでの食習慣を関連付けて検討してみた研究のご紹介(Dunneram et al., J Epi Comm Health, 2018)。
UKイングランド、スコットランド、ウェールズの登録された40-65歳の女性コホート,1995~1998年にベースラインデータを収集し、4年間の追跡を行って解析したというもの。
対象14, 172名のうち914名が自然閉経に至っており、平均年齢は50.5歳、それまでのデータでも51歳ということになっています。
昨今健康に良いとされる魚や新鮮なナッツ類をよく食べている女性で3.3年、0.9年(per portion/dayという言い方ですが)、閉経が遅れる傾向があったようです。炭水化物食(パスタや精米)は逆に1.5年ほど早まるという結果でした。
閉経という人体の一大変革期における変化は非常にダイナミックで、エストロゲンの低下、アンドロゲン・プロゲステロンの増加をもたらし、骨粗しょう症やうつ症との関連が示唆されています。閉経の遅れは、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がんとの関連性も言われており、適切な時期の閉経とそのホルモン制御が今後重要な成人医学における課題になっていくことでしょう。特に高齢化社会、その後50年間の生活を支えていくうえで重要になっていくことは容易に想像できます。
この研究自体が比較的新規性をもって公表されましたが、今後は最適なホルモン環境、食生活の提案などもこういった研究からなされていくことでしょう。また、女性だけでなく、男性も含めた更年期に対する不安を払拭させるような、リスク回避の模索も別の研究テーマになっていくのかなあと期待しています。
UKイングランド、スコットランド、ウェールズの登録された40-65歳の女性コホート,1995~1998年にベースラインデータを収集し、4年間の追跡を行って解析したというもの。
対象14, 172名のうち914名が自然閉経に至っており、平均年齢は50.5歳、それまでのデータでも51歳ということになっています。
昨今健康に良いとされる魚や新鮮なナッツ類をよく食べている女性で3.3年、0.9年(per portion/dayという言い方ですが)、閉経が遅れる傾向があったようです。炭水化物食(パスタや精米)は逆に1.5年ほど早まるという結果でした。
閉経という人体の一大変革期における変化は非常にダイナミックで、エストロゲンの低下、アンドロゲン・プロゲステロンの増加をもたらし、骨粗しょう症やうつ症との関連が示唆されています。閉経の遅れは、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がんとの関連性も言われており、適切な時期の閉経とそのホルモン制御が今後重要な成人医学における課題になっていくことでしょう。特に高齢化社会、その後50年間の生活を支えていくうえで重要になっていくことは容易に想像できます。
この研究自体が比較的新規性をもって公表されましたが、今後は最適なホルモン環境、食生活の提案などもこういった研究からなされていくことでしょう。また、女性だけでなく、男性も含めた更年期に対する不安を払拭させるような、リスク回避の模索も別の研究テーマになっていくのかなあと期待しています。
5/02/2018
抗コリン薬の副作用:認知症への影響
抗コリン薬は胃痛や乗り物酔い抑制に使われたり、一部のパーキンソン病の治療薬として使用されている。この薬剤の使用による認知症状への影響を、nestedケースコントロールスタディで検討した報告がBMJ誌にあった(Richardson et al., BMJ, 2018)のと、この記事に対するEditorialもご紹介します。
UKの外来、多くはプライマリーケアの診療情報データべースであるClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用いた研究。4万名の認知症患者を特定しそのマッチングしたコントロールを1対7で置いた比較。ケースの対象時点で該当しなければ前後に認知症(ケース)となったかたもコントロールとして組入れられるデザインである。
曝露された抗コリン薬の処方量やクラス別の解析などもされているが概ねの結論は、抗コリン薬曝露は1.1倍前後のオッズで認知症アウトカムとなるとの結果である。本当かどうか今後の追跡が必要であるが、15-20年前における曝露でも同様のリスクが推定されている。
抗コリン薬の過剰摂取や三環系抗うつ薬との併用によって中毒状態となるとせん妄、昏睡、けいれん、厳格、低血圧、高熱などの症状が生じるとのことであるが、使用経験、その作用機序から上記の認知症リスクに対しても警鐘を鳴らし、適切な処方を目指すことを訴えている。
4/29/2018
外科医も人間
以前同じ著者から診療を診ている医師の特性の違いと予後を解析したUSデータがありましたが(過去のブログから)、
同じ目線で外科医の背景と高齢患者における術後の予後を比較し、手術医の背景特性との関連を見たという報告が最近のBMJ誌のトップに並んでおりました(Tsugawa et al., BMJ 2018)。同誌内でのコメント記事も出ていたので合わせてご紹介します。
2011-2014年の間のメディケアプランの入院のうち20の主要な術後の30日間の死亡をアウトカムとして、手術者の背景、年齢(40未満、40代、50代、60歳以上)と男女で予後に違いが出るか検討。
大きい違いは見られていないが、各年齢層ごとのトレンドは有意に違いが出たとの報告、つまり、年齢層が高い術者の方が若干ではあるが死亡率が低下していたというものだ。
男女間の術者の違いは認められなかったが、50代女性の術者が最も低い死亡率となっていたそうである。
何事も経験が技術を改善させていることを知らされる結果であったが、逆のことは起こっていなかったか、例えば70代以上、手術医外科医の背景疾患(緑内障など)の有無が手術に影響を与えていなかったなど、個々のケースの検証、手術の成否を見ていくことも重要な気がしている。
またロボット支援手術と人間だけの作業の成功確率や予後への影響など今後もクエスチョンは尽きないようである。
同じ目線で外科医の背景と高齢患者における術後の予後を比較し、手術医の背景特性との関連を見たという報告が最近のBMJ誌のトップに並んでおりました(Tsugawa et al., BMJ 2018)。同誌内でのコメント記事も出ていたので合わせてご紹介します。
2011-2014年の間のメディケアプランの入院のうち20の主要な術後の30日間の死亡をアウトカムとして、手術者の背景、年齢(40未満、40代、50代、60歳以上)と男女で予後に違いが出るか検討。
大きい違いは見られていないが、各年齢層ごとのトレンドは有意に違いが出たとの報告、つまり、年齢層が高い術者の方が若干ではあるが死亡率が低下していたというものだ。
男女間の術者の違いは認められなかったが、50代女性の術者が最も低い死亡率となっていたそうである。
何事も経験が技術を改善させていることを知らされる結果であったが、逆のことは起こっていなかったか、例えば70代以上、手術医外科医の背景疾患(緑内障など)の有無が手術に影響を与えていなかったなど、個々のケースの検証、手術の成否を見ていくことも重要な気がしている。
またロボット支援手術と人間だけの作業の成功確率や予後への影響など今後もクエスチョンは尽きないようである。
3/25/2018
シングルマザーだけではない、一人親のデメリット
こちらもLancet 姉妹誌、Lancet Public Healthからのご紹介(Chiu et al, Lancet Public Health 2018)。
内容は、ひとり親、特に父親の場合の死亡リスクを評価しようとしたものです。
これまでの研究の着目点はシングルマザーに着目したものが多かったようですが、ここでは父親に着目して解析を試みました。カナダのオンタリオ州の健康データ、2001年から2012年の対象者で2016年までの最新死亡データに基づき解析を行っています。
なによりUKではすでに10%近くの扶養義務のある子の親がシングルファーザーであるようです。
シングルファーザーの租死亡率(1000人年あたり5・8人)は、シングルマザー(1000人年当たり1,74人)やパートナーのいる父親(1000人年あたり1 94人)の3倍高かったようです。 シングルファーザーの調整死亡率でも、対シングルマザー(危険率[HR] 2 49、95%CI 1 20-5 15; p = 0.01)および対パートナーのいる父親(2・06,1 ・11-3・83; p = 0・02)となりました。
シングルファーザーとパートナーのいる親グループの死亡率が最も低いことが判明しました。 医師は、社会的な履歴がこれらの高リスク患者を特定するのに役立つ可能性が示されました。 この高い死亡リスクの原因、ならびに臨床および公衆衛生の介入が生活習慣および行動の危険因子をどのように改善できるかを理解するためには、さらなる研究が必要です。
推定される理由は、シングルの男性は、医療アクセスが顕著に低いこと、うつなど精神疾患のリスクが高いことなどが挙げられます。シングルマザーと異なり社会経済性は若干改善されていますが、パートナーを持つ男性、女性と比べると見劣りしています。家庭を持つこと、維持することの重要性をもっと社会として認識、訴えていくこと、保険などでの差別化などよりリスク認識を高めていく必要もあるのではないでしょうか?
しかし、コメンタリーで触れられているように、
世帯内に児童を持つことによる肯定的な影響に注意することは重要のようです。 スウェーデンのWeitoftらが行った調査では、死亡率はシングルファーザーではなく、子供と一緒に暮らしていない父親や子供がいない男性で最も高くなったようです。
これらの比較はChiuらによってなされたものではありませんが、その結果はシングルファーザーが特に脆弱なグループである可能性があることを示しています。 公衆衛生の観点から、ヘルスケアの専門家はこの脆弱なグループに気づくく必要があり、一方で、父親の早期死亡の危険性の背後にある理由を明らかにするためにさらなる研究が行われる必要もあります。
内容は、ひとり親、特に父親の場合の死亡リスクを評価しようとしたものです。
これまでの研究の着目点はシングルマザーに着目したものが多かったようですが、ここでは父親に着目して解析を試みました。カナダのオンタリオ州の健康データ、2001年から2012年の対象者で2016年までの最新死亡データに基づき解析を行っています。
なによりUKではすでに10%近くの扶養義務のある子の親がシングルファーザーであるようです。
シングルファーザーの租死亡率(1000人年あたり5・8人)は、シングルマザー(1000人年当たり1,74人)やパートナーのいる父親(1000人年あたり1 94人)の3倍高かったようです。 シングルファーザーの調整死亡率でも、対シングルマザー(危険率[HR] 2 49、95%CI 1 20-5 15; p = 0.01)および対パートナーのいる父親(2・06,1 ・11-3・83; p = 0・02)となりました。
シングルファーザーとパートナーのいる親グループの死亡率が最も低いことが判明しました。 医師は、社会的な履歴がこれらの高リスク患者を特定するのに役立つ可能性が示されました。 この高い死亡リスクの原因、ならびに臨床および公衆衛生の介入が生活習慣および行動の危険因子をどのように改善できるかを理解するためには、さらなる研究が必要です。
推定される理由は、シングルの男性は、医療アクセスが顕著に低いこと、うつなど精神疾患のリスクが高いことなどが挙げられます。シングルマザーと異なり社会経済性は若干改善されていますが、パートナーを持つ男性、女性と比べると見劣りしています。家庭を持つこと、維持することの重要性をもっと社会として認識、訴えていくこと、保険などでの差別化などよりリスク認識を高めていく必要もあるのではないでしょうか?
しかし、コメンタリーで触れられているように、
世帯内に児童を持つことによる肯定的な影響に注意することは重要のようです。 スウェーデンのWeitoftらが行った調査では、死亡率はシングルファーザーではなく、子供と一緒に暮らしていない父親や子供がいない男性で最も高くなったようです。
これらの比較はChiuらによってなされたものではありませんが、その結果はシングルファーザーが特に脆弱なグループである可能性があることを示しています。 公衆衛生の観点から、ヘルスケアの専門家はこの脆弱なグループに気づくく必要があり、一方で、父親の早期死亡の危険性の背後にある理由を明らかにするためにさらなる研究が行われる必要もあります。
木々の緑と海の青、自然環境と自殺の関係
最近のLancet姉妹紙からのご紹介(Helbich et al., Lancet Planetary Health 2018)。
ここでは、Helbichらのグループは、緑色の空間(草、森林、または公園が豊富にある環境)と青色空間(新鮮な海水)からの近接性と、 オランダのほぼ400の自治体で自殺率を比較しました。 彼らは、緑地の割合が中程度以上と低い地域と比較して、緑地環境が多いほど自殺率が低いという統計的な証拠を報告しています。 これとは対照的に、自殺と青色環境の関係や海岸近くに住んでいることの関連性は見つからなかったことを報告しています。
緑地の割合が高い市町村(相対リスク0,879,95%信頼区間0,779~0,991)または緑地(0,919,0.446~0.998)の中程度の割合を示す市町村では、 緑地の少ない自治体に比べて自殺リスクが低かったことが示されました。 緑地の都市性(都市か田舎か、という点)とは影響しなかったようです。 青色環境、沿岸の接近性も自殺のリスクとは関連していなかったようです。 住地域の相対自殺リスクの地理的バラつきはかなりあり、オランダの南(内陸部)はリスクが高いようでした。 かれらの調査結果は、自然環境、特に緑化への曝露が自殺死亡率を低下させる役割を果たすかもしれないという考えを支持する結果となりました。 個々のレベルでの将来の研究によって確認されれば、環境曝露の考慮は自殺予防プログラムを豊かにするかもしれない、との言ですが、本当に何が自殺を減少させているのか、自殺手段のアクセスの容易さや、社会のサポートなど、この時期にはいろいろと考えさせられる研究です。
日本国内の地域差、周囲環境、都市性、年齢分布などとの違いを見てみたいものです。
ここでは、Helbichらのグループは、緑色の空間(草、森林、または公園が豊富にある環境)と青色空間(新鮮な海水)からの近接性と、 オランダのほぼ400の自治体で自殺率を比較しました。 彼らは、緑地の割合が中程度以上と低い地域と比較して、緑地環境が多いほど自殺率が低いという統計的な証拠を報告しています。 これとは対照的に、自殺と青色環境の関係や海岸近くに住んでいることの関連性は見つからなかったことを報告しています。
緑地の割合が高い市町村(相対リスク0,879,95%信頼区間0,779~0,991)または緑地(0,919,0.446~0.998)の中程度の割合を示す市町村では、 緑地の少ない自治体に比べて自殺リスクが低かったことが示されました。 緑地の都市性(都市か田舎か、という点)とは影響しなかったようです。 青色環境、沿岸の接近性も自殺のリスクとは関連していなかったようです。 住地域の相対自殺リスクの地理的バラつきはかなりあり、オランダの南(内陸部)はリスクが高いようでした。 かれらの調査結果は、自然環境、特に緑化への曝露が自殺死亡率を低下させる役割を果たすかもしれないという考えを支持する結果となりました。 個々のレベルでの将来の研究によって確認されれば、環境曝露の考慮は自殺予防プログラムを豊かにするかもしれない、との言ですが、本当に何が自殺を減少させているのか、自殺手段のアクセスの容易さや、社会のサポートなど、この時期にはいろいろと考えさせられる研究です。
日本国内の地域差、周囲環境、都市性、年齢分布などとの違いを見てみたいものです。
3/24/2018
世界の妊娠、中絶事情と経済的豊かさの関係
最近のLancet誌の記事からのご紹介(Bearak et al., Lancet Global Health 2018)。
意思の状態と妊娠率の関係性の推定は、女性と夫婦がどれほど効果的に妊娠を達成できるかを理解し、家族計画プログラムの影響をモニターするために有効活用できる可能性があります。研究グループは、1990年から2014年までのカップル、女性の妊娠の意志とその妊娠から、世界、地域の妊娠率を推定しました。
ベイジアン階層的時系列モデルという新しいモデルでの分布推定を開発したとのことですが対象は 105カ国、出産または妊娠の意思状況に関する298のデータポイントが得られたそうです。
正直この分野に無知な私が意外だったのは、妊娠の推定44%(90%の不確実性間隔[UI] 42-48)が意図されていないものでした。意図されない妊娠率は、1990-94年の15-44歳の1000人あたり64(59-81)から2010- 14年の45(42-56)でこの間に30%(UI 21-39の90%)減少していました。開発途上地域では、15-44歳の1000人あたり77人(74-88人)から65人(62-76人)で16%(UI5-24の90%)減少しました。先進国の意図しない妊娠率の低下は中絶率の低下と一致し、途上国の意図しない妊娠率の減少は意図しない出生率の低下と一致していたとのこと。 2010-14年には、先進国における意図しない妊娠の59%(UI 54-65の90%)、開発途上地域における55%(52-60)が中絶に至っていました。意図されていない妊娠率は、開発途上地域ではまだまだ実質的に高いままであり、女性が意図しない妊娠を避け、そのような妊娠を経験した人々の健康的な結果を確実にするために必要性を訴えています。
単純には、教育の普及、経済の豊かさはこのような意図しない妊娠や中絶を確実に減少させられるはずですが、経済的に裕福であるはずの地域ですらこの程度であり、先進国での妊娠、中絶問題、それに伴う女性の健康、安全を考慮することは今後の成熟する世界にますます必要になるかと思われます。高齢化、成熟社会では出生率が低下し、希少な出生・子育てに対する希少価値、貴重となるはずだからです。今後も一考していきたいです。
意思の状態と妊娠率の関係性の推定は、女性と夫婦がどれほど効果的に妊娠を達成できるかを理解し、家族計画プログラムの影響をモニターするために有効活用できる可能性があります。研究グループは、1990年から2014年までのカップル、女性の妊娠の意志とその妊娠から、世界、地域の妊娠率を推定しました。
ベイジアン階層的時系列モデルという新しいモデルでの分布推定を開発したとのことですが対象は 105カ国、出産または妊娠の意思状況に関する298のデータポイントが得られたそうです。
正直この分野に無知な私が意外だったのは、妊娠の推定44%(90%の不確実性間隔[UI] 42-48)が意図されていないものでした。意図されない妊娠率は、1990-94年の15-44歳の1000人あたり64(59-81)から2010- 14年の45(42-56)でこの間に30%(UI 21-39の90%)減少していました。開発途上地域では、15-44歳の1000人あたり77人(74-88人)から65人(62-76人)で16%(UI5-24の90%)減少しました。先進国の意図しない妊娠率の低下は中絶率の低下と一致し、途上国の意図しない妊娠率の減少は意図しない出生率の低下と一致していたとのこと。 2010-14年には、先進国における意図しない妊娠の59%(UI 54-65の90%)、開発途上地域における55%(52-60)が中絶に至っていました。意図されていない妊娠率は、開発途上地域ではまだまだ実質的に高いままであり、女性が意図しない妊娠を避け、そのような妊娠を経験した人々の健康的な結果を確実にするために必要性を訴えています。
単純には、教育の普及、経済の豊かさはこのような意図しない妊娠や中絶を確実に減少させられるはずですが、経済的に裕福であるはずの地域ですらこの程度であり、先進国での妊娠、中絶問題、それに伴う女性の健康、安全を考慮することは今後の成熟する世界にますます必要になるかと思われます。高齢化、成熟社会では出生率が低下し、希少な出生・子育てに対する希少価値、貴重となるはずだからです。今後も一考していきたいです。
2/04/2018
ロンドンの空気環境と出生体重
企業に勤める身分では到底このような公共のための自由な発想、探索的研究は困難なので、こういう研究はぜひばんばん趣味的実施をしてもらいたいものだなあという羨望とともにご紹介。
タイトル通り、都市ロンドンの空気環境が出生体重に与えるインパクトを検証したもの(Smith et al., BMJ 2017)。
NO2 , NOx , PM2.5 PM2.5, and PM10の空気汚染量と騒音の曝露の程度と出生体重との関連性を見たもので、汚染・騒音曝露が高いほど低体重、少ない妊娠期間と関連することが見出されています。
こういう環境、公衆衛生学的な検証が出来るのも、問題提起される以前からデータを集め、解析し検証することを行えること、そのデータ解釈などについて公衆で周知され、議論され真に正しい減少を理解しようとする姿勢、科学的な啓蒙が市民にいきわたっていなければなかなか難しいものであると思う。少なくともこういった研究を受け入れるリテラシー、必要性の意義自体を理解できる文化を醸成しないといけな。
本題とは関係なくなりますが、こういう研究が後々大事な政策根拠、研究発展につながることが多々あります。いまだに日本人研究者の中ではたとえ専門的な職業に従事している方でも疫学研究・観察研究の重要性を理解できず、RCT信奉みたいなことを言っている方をお見掛けするが、欧米では研究の手法として介入するかしないかの違いであり、疾病理解や改善やリスク評価といった原則に立てばどちらも同じ程度に評価している現状をご存じなのか疑ってしまうことが多々ある。患者さんを目の前にしている現場に立つ方々にこそ研究実施者としての目線を培ってほしいと思います。
タイトル通り、都市ロンドンの空気環境が出生体重に与えるインパクトを検証したもの(Smith et al., BMJ 2017)。
NO2 , NOx , PM2.5 PM2.5, and PM10の空気汚染量と騒音の曝露の程度と出生体重との関連性を見たもので、汚染・騒音曝露が高いほど低体重、少ない妊娠期間と関連することが見出されています。
こういう環境、公衆衛生学的な検証が出来るのも、問題提起される以前からデータを集め、解析し検証することを行えること、そのデータ解釈などについて公衆で周知され、議論され真に正しい減少を理解しようとする姿勢、科学的な啓蒙が市民にいきわたっていなければなかなか難しいものであると思う。少なくともこういった研究を受け入れるリテラシー、必要性の意義自体を理解できる文化を醸成しないといけな。
本題とは関係なくなりますが、こういう研究が後々大事な政策根拠、研究発展につながることが多々あります。いまだに日本人研究者の中ではたとえ専門的な職業に従事している方でも疫学研究・観察研究の重要性を理解できず、RCT信奉みたいなことを言っている方をお見掛けするが、欧米では研究の手法として介入するかしないかの違いであり、疾病理解や改善やリスク評価といった原則に立てばどちらも同じ程度に評価している現状をご存じなのか疑ってしまうことが多々ある。患者さんを目の前にしている現場に立つ方々にこそ研究実施者としての目線を培ってほしいと思います。
片頭痛をあなどるなかれ
片頭痛Migraineは全世界の人類の疾病負担であるようで、なんと12%もの有病率。中でも頭痛の前または間に一時的局所的な神経学的現象が起こるwith aura(適当な訳語が不明です、ありからず)のタイプの片頭痛の方は、心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、静脈血栓塞栓症および心房繊維化または心房粗動のリスクが高いこと、 片頭痛はほとんどの心臓血管疾患の重要な危険因子となることを報告している。(Adelborg et al., BMJ 2018)。
対象集団はオランダの国全体を網羅する医療データベース1995-2013年のデータから片頭痛患者51,032名をケースとして、マッチングした51万名のコントロールと比較してある。
その他疾患の出現率はあまり大きく偏っていないにもかかわらず心血管疾患に限っては明らかに高くなっているようである。
片頭痛自体が虚血性神経障害の表れた症状であることから、片頭痛が繰り返す、入院加療が必要になるくらいの頭痛が現れたら循環器障害を疑った介入、検査を必要とすることがっここから得た知識である。
対象集団はオランダの国全体を網羅する医療データベース1995-2013年のデータから片頭痛患者51,032名をケースとして、マッチングした51万名のコントロールと比較してある。
その他疾患の出現率はあまり大きく偏っていないにもかかわらず心血管疾患に限っては明らかに高くなっているようである。
片頭痛自体が虚血性神経障害の表れた症状であることから、片頭痛が繰り返す、入院加療が必要になるくらいの頭痛が現れたら循環器障害を疑った介入、検査を必要とすることがっここから得た知識である。
PPIプロトンポンプ阻害薬の弊害:認知症への影響??
最近のJAMA姉妹誌を閲覧している中で目についてちょっと意外だったのでご紹介。(Gomm et al., JAMA Neurology 2016)
胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬の処方者では認知症の発症リスクが高まる、という結果をドイツの健康保険データの解析から明らかにしたもの。
消化器症状(下痢吐き気など)や肝機能については副作用として知られているが、このような長期作用として、またその機序からは不明な認知症はどのような説明がされているのか、追加試験や機序探索はその後どうなっているのか気になる。
Discussion文中では、PPIが直接BBBを通過して脳内酵素活性を調節すること、そのなかでβ-セクレターゼBACE1活性と組み合わさってγ-セクレターゼの逆調節によりAβレベルの蓄積を導く増大させることを示唆している。別の説明としては脳を構成するマイクログリア(脳内のマクロファージと呼ばれる)によるFibrillar Aβクリアランスは pH依存性で、PPIのターゲットになりえるVacuolar-type H+–adenosine triphosphatase (V-ATPase) proton pumpsがこのpH調節(酸化)にかかわっており、その阻害によりAβクリアランスが進まず蓄積される、というもの。どこまで証明されてきたのであろう。
胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬の処方者では認知症の発症リスクが高まる、という結果をドイツの健康保険データの解析から明らかにしたもの。
消化器症状(下痢吐き気など)や肝機能については副作用として知られているが、このような長期作用として、またその機序からは不明な認知症はどのような説明がされているのか、追加試験や機序探索はその後どうなっているのか気になる。
Discussion文中では、PPIが直接BBBを通過して脳内酵素活性を調節すること、そのなかでβ-セクレターゼBACE1活性と組み合わさってγ-セクレターゼの逆調節によりAβレベルの蓄積を導く増大させることを示唆している。別の説明としては脳を構成するマイクログリア(脳内のマクロファージと呼ばれる)によるFibrillar Aβクリアランスは pH依存性で、PPIのターゲットになりえるVacuolar-type H+–adenosine triphosphatase (V-ATPase) proton pumpsがこのpH調節(酸化)にかかわっており、その阻害によりAβクリアランスが進まず蓄積される、というもの。どこまで証明されてきたのであろう。
アメリカンフットボール選手、プロアスリートの寿命
最近のJAMA誌にUSのNational Football Leagueの選手の寿命を比較検討した研究が掲載されていましたのでご紹介。(Venkataramani et al., 2018 JAMA、 Editorialもついていたのでこちらから)
2010年前後からアスリートの怪我として、そのスポーツのプレイ中で発生する脳への影響、外傷性の脳への障害が問題視されるようになり、短期(脳震盪)および長期(認知、神経筋、または運動障害)への懸念が高まるようになってきた。そんな中、死亡率への影響を検証した研究が少なく、また以前に行われた研究では比較として一般男性を対象とした比較しか行われていなかったことから、同じNFL選手として登録されながら1987年の選手たちのストライキによって代替選手として登録された人たちを対象として比較を試みたというもの。
以前に行われていた研究で対象とされた一般集団に比べ、プロアスリートたちは、積極的な栄養学に則った食事・カロリー調節や日々のトレーニング、医療・健康へのアクセスが容易であることからきちんとした比較ではないのではないか、という疑問から始まったようだ。因みにその以前研究では特にアスリートで死亡率のリスクが高くなる、とはならなかったようである。
1982-1992年シーズンにデビューした3812名のUS National Football League (NFL)選手、うちレギュラー選手 (n = 2933)と1987年の代替選手を30年間ほど追跡した結果であるが、
レギュラー選手 144名(4.9%) と代替選手の 37名 (4.2%) が追跡期間中に亡くなり、その死亡リスク差は1.0% [95% CI, −0.7% to 2.7%]; P = .25、ハザード比は1.38 (95% CI, 0.95 to 1.99; P = .09)、差がない、となったようだ。
しかしながらルーゲーリック病として知られる筋萎縮性側索硬化症(ALS)による死亡がレギュラー選手で7例も認められており、神経障害・変性への影響がないとはいいがたいのではないのか、といった疑問をEditorial commentでは述べられている。
今回のアメリカンフットボールのみならず、ラグビー、アイスホッケー、サッカーなどなど接触を伴うスポーツにおけるアスリートの健康を考え、決して命と引き換えにすることなくファンを楽しませ続けていってくれることを切に願う。
2010年前後からアスリートの怪我として、そのスポーツのプレイ中で発生する脳への影響、外傷性の脳への障害が問題視されるようになり、短期(脳震盪)および長期(認知、神経筋、または運動障害)への懸念が高まるようになってきた。そんな中、死亡率への影響を検証した研究が少なく、また以前に行われた研究では比較として一般男性を対象とした比較しか行われていなかったことから、同じNFL選手として登録されながら1987年の選手たちのストライキによって代替選手として登録された人たちを対象として比較を試みたというもの。
以前に行われていた研究で対象とされた一般集団に比べ、プロアスリートたちは、積極的な栄養学に則った食事・カロリー調節や日々のトレーニング、医療・健康へのアクセスが容易であることからきちんとした比較ではないのではないか、という疑問から始まったようだ。因みにその以前研究では特にアスリートで死亡率のリスクが高くなる、とはならなかったようである。
1982-1992年シーズンにデビューした3812名のUS National Football League (NFL)選手、うちレギュラー選手 (n = 2933)と1987年の代替選手を30年間ほど追跡した結果であるが、
レギュラー選手 144名(4.9%) と代替選手の 37名 (4.2%) が追跡期間中に亡くなり、その死亡リスク差は1.0% [95% CI, −0.7% to 2.7%]; P = .25、ハザード比は1.38 (95% CI, 0.95 to 1.99; P = .09)、差がない、となったようだ。
しかしながらルーゲーリック病として知られる筋萎縮性側索硬化症(ALS)による死亡がレギュラー選手で7例も認められており、神経障害・変性への影響がないとはいいがたいのではないのか、といった疑問をEditorial commentでは述べられている。
今回のアメリカンフットボールのみならず、ラグビー、アイスホッケー、サッカーなどなど接触を伴うスポーツにおけるアスリートの健康を考え、決して命と引き換えにすることなくファンを楽しませ続けていってくれることを切に願う。
1/07/2018
UKにおけるファーストフードと肥満、移民の関係?
米国もさることながら、国民性としてではなく、おそらく移民の影響による可能性のある英国(UK)でも肥満は社会問題化、法規制の対象として考えるようになっている(参考記事)。
そんな中、ミドルライフ世代(40-70歳代)にとって居住地域の環境と肥満との関連性を検討した研究が最近のLancet誌に掲載されていました。(紹介記事:Mason et al)
研究要約は、2006-2010年の間にUK Biobankに登録され、研究に必要な要件を満たす40万人超を対象に、肥満の指標(腹囲、BMIもしくは体脂肪率)を測定し、その大小と住居周辺環境:運動施設との距離、ファストフード店との距離やその数、との関連性を複数モデルの線形性多変量回帰で解析したというもの。
Biobank(生体材料や遺伝情報を匿名化して研究利用に提供)にこういった住居環境、生活環境のデータも含まれ解析できること自体に驚きです。
結果は、運動施設が近くにある、多くあるまたはファストフード店が遠くにある住民ほど肥満指標が良い方にでる(腹囲などが小さい値)という結果。
併せて、女性の方が感度が高い(周辺住環境に反応が良い)こと、ほかの文献でも指摘されていますが収入が高い住民ほど感度が高いことがわかりました。これは運動施設の利用料との関連性も指摘されます。一方で金銭的余裕がある市民はファストフードを選んでいない可能性もあるということです。
このような研究をもとに、ファストフードにたばこ税のような税金をかけ、ファストフードを高額にして安易にアクセスできないようにすることが社会政策として考えていくということですかね。ファストフード業界からは反発を食らいそうですが、それが理性的な判断かとおもっています。移民が入りにくくなることと将来の変化をこれからもおっていく必要があるかもしれません。
そんな中、ミドルライフ世代(40-70歳代)にとって居住地域の環境と肥満との関連性を検討した研究が最近のLancet誌に掲載されていました。(紹介記事:Mason et al)
研究要約は、2006-2010年の間にUK Biobankに登録され、研究に必要な要件を満たす40万人超を対象に、肥満の指標(腹囲、BMIもしくは体脂肪率)を測定し、その大小と住居周辺環境:運動施設との距離、ファストフード店との距離やその数、との関連性を複数モデルの線形性多変量回帰で解析したというもの。
Biobank(生体材料や遺伝情報を匿名化して研究利用に提供)にこういった住居環境、生活環境のデータも含まれ解析できること自体に驚きです。
結果は、運動施設が近くにある、多くあるまたはファストフード店が遠くにある住民ほど肥満指標が良い方にでる(腹囲などが小さい値)という結果。
併せて、女性の方が感度が高い(周辺住環境に反応が良い)こと、ほかの文献でも指摘されていますが収入が高い住民ほど感度が高いことがわかりました。これは運動施設の利用料との関連性も指摘されます。一方で金銭的余裕がある市民はファストフードを選んでいない可能性もあるということです。
このような研究をもとに、ファストフードにたばこ税のような税金をかけ、ファストフードを高額にして安易にアクセスできないようにすることが社会政策として考えていくということですかね。ファストフード業界からは反発を食らいそうですが、それが理性的な判断かとおもっています。移民が入りにくくなることと将来の変化をこれからもおっていく必要があるかもしれません。
宇宙滞在と脳構造の変化 続編
過去に記載した記事の詳細な解説、コメントがMedical tribune誌に出ていたので引用させていただきます。
”1.「宇宙滞在で脳MRI形態が変化した」とする論文の発表
”1.「宇宙滞在で脳MRI形態が変化した」とする論文の発表
2017年11月2日にN Engl J Med(2017; 377: 1746-1753)で発表され、日米のニュースでも大きく扱われて本紙のコラム「宇宙で探るMedical Frontier」でも取り上げた。
もともとは半年間宇宙に滞在した宇宙飛行士に視神経乳頭浮腫が生じたことがOphthalmology(2011; 118: 2058-2069)で報告され、その対策・研究のために画像データを解析したものである。
もし無重力の影響が脳全体に及ぶとすると、例えば前庭神経核も影響なしでは済まず、「宇宙酔い」の成因に関係するかもしれない。
軌道上では脊柱のS字カーブが失われるために身長が伸びて腰痛が発生するのではないかとSpine(2016; 41: 1917-1924)で示されており、これとの関連も疑われる。長期飛行で多大な経験を持つロシアでいわれているところの「物憂い状態(neurasthenia)」の源もこれなのだろうか。いろいろ想像できるところである。
しかしそもそも、JAMA Ophthalmol(2017; 135: 992-994)で紹介された、視神経乳頭浮腫に代表されるSpaceflight Associated Neuro-ocular Syndrome(SANS)は数割の飛行士にしか認められないので、主因は脳でなく眼の側にある可能性が高い。”
だそうです。まだまだ検討の余地大ですね。
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