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6/16/2018

ホスピスケアと最期の時の迎え方

USでは2000年時に23%だったホスピス(終末期緩和ケア)利用者が2014年には48%にまで増えている一方、US公的保険Medicareが規定するホスピス利用方針として、疾患治療は行わないよう設けています。おそらく費用対効果・レギュラトリーサイエンスの観点からかと思われます。そのためか、死の最後の3日間までホスピス利用しない方々は2000年の22%から2009年の28%と増加傾向を示しているようです。このホスピス利用期間の短縮が最期の時のQoLを低下させたり、不適当な痛みにつながっていないか、患者さんの訴えを無視するような処置になってないか倫理的な問題ともなっています。特に週に3回の血液透析を必要とするESRD末期腎臓病患者さんにとってその血液透析の治療とホスピス利用が密接に関係しているようです。


そこで今回ご紹介する論文は、保険財政の観点で制限されるポリシーが、果たして正しいのかどうかを、ホスピス利用期間と最期の期間にかかる医療資源と費用との関係性を、特に血液透析患者さんに着目して調べてみたという論文です。(Wachterman et al., JAMA Internal Medicine 2018) 興味深い紹介記事も出ていたので合わせてご紹介。

2000年から2014年の間に亡くなられた129万人の血液透析患者のうち、メディケア被保険者の77万人を対象に、ホスピス利用期間と最期の1か月間の入院、ICUあるいは集中治療の実施、病院内(加療中の)死亡そして医療費を比べたもの。

77万人のうちホスピス利用者はたった20%(他の終末期疾患と比べて低い)、しかもその40%以上が最期の時のほんの3日間以下の利用であった。透析治療を受け、終末期ケアの状態でありながら60万人、8割の方は緩和ケアなく亡くなっているという現実が示されました。

また、今回この論文の着目点として、最後の3日以内のホスピス利用は、その最後の1か月間の病院での死亡、集中治療の必要性はホスピス利用しない人に比べ低下していたが、入院・ICU利用率はホスピスを利用しない人と変わらず、その治療にかかる費用も変わらないことが示されています。一方でより長くホスピス滞在していた方々、特に2週間、あるいはそれ以上の滞在者の医療費は顕著に低く収まっているという結果が示されました。

解釈は非常に困難かもしれませんが、単純に医療費だけで考えた場合、最期を迎える人のQOLを高く維持し、医療費を低く抑える仕組みが活用されてもよいのかと考えます。
超高齢化社会を迎え、透析患者の著しい増加を見る先進諸国では喫緊の課題として医療政策でも検討されるべきではないでしょうか?

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