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12/10/2017
気候変動とパブリックヘルス、グローバルヘルス:Lancet 2017報告
以前にもLancet Planetary Health誌お創刊号の記事をご紹介したが、本日こちらでご紹介する記事はレビューとなっており、もっとスケールの大きな取り組み、Lancet Countdownでの取り組みの中間報告といったものが紹介されている(本日のお題:引用文献:Watts et al., )。
パリ協定に基づく環境保全の実行を、独立した機関として検証しようという国際的コンソーシアムの取り組みで、世界の全大陸にまたがる24の学術機関および政府組織の様々な領域の代表者を擁し、その協力には、気候科学者、生態学者、エンジニア、エネルギー、食品、交通システムの専門家、地理学者、数学者、社会科学者、政治学者、公衆衛生専門家、医師などが含まれます。 気候変動の影響、曝露、脆弱性、健康への適応計画と回復力の5つのセクションにわたる年次指標を報告しています。
温暖化による赤道近辺諸国の感染症などの状況、ワクチン・医薬品へのアクセス、PM2.5、炭素&窒素酸化物、硫黄酸化物などの空気環境などがもたらす健康被害や影響を評価したり、各国の気候変動への啓発(広報活動)やその認知度向上を測ったり、エネルギー依存の内訳(化石燃料・再生エネルギーなど)やゼロ炭素エネルギーへの取り組みを評価したりしています。
気温変動により農村部の労働力への影響が、2000年から2016年までに5.3%減少したということや、気候に敏感な7つの病気(デング熱、マラリア、胃腸炎、メラノーマ、自然災害、熱波や寒波、タンパク栄養失調)による関連死亡者数の推移を示す死亡率推定値は1990年以来測定を継続している(図7)。
また、気温1℃の上昇あたり6%の小麦生産が減少、夜間の気温増加に敏感で、1度の上昇あたり米穀(お米)収穫率が10%低下するとされているそうです。ビタミンA,B12、亜鉛、鉄分、オメガ脂肪酸摂取に重要な漁獲量減少も世界的な健康への影響、例えば循環器疾患リスクの増大となることを懸念しています。
その他経済へのインパクトや、ニュースで取り扱われる気候変動の記事の数=啓発や科学文献数などもインディケーターとして測定しています。興味ある方ぜひご一読ください。
が、何より、私が気になったのが、世界最速で超高齢化社会に突入し、医療・健康商品の3大市場の一雄の規模を誇り、Top10くらいの少なくない人口、世界三位の経済規模を有する日本という国が、こういった国際的取り組み、グローバルヘルスへのデータ提供や解析の科学的貢献もなく(日本人研究者参加なし)、他国の熱帯地域の感染症対策への取り組み(ワクチン開発など)もなく、独自調査の取り組みもないという現実がとても気がかりです。野口英世や大村智先生のイベルメクチン開発の貢献までとはいかぬまでも、国際社会への貢献、その志のなさに嘆息がもれます。
国際社会が国境なく動いていく中で日本人の貢献が非常に実質的に少なくなっていることは、他の医学、ヘルスサイエンスの分野でも同様に下がってきているのかなあと逡巡としてしまいます。
私自身も含め、研究者としての国際貢献を目指しましょう!
野菜、フルーツ、豆類の果報
135,335人の参加者、参加年齢35歳から70歳までの循環器疾患既往のない方を18か国の613のコミュニティー(都市)からJan 1, 2003からMarch 31, 2013の約10年間集め、7年半ほどの平均追跡期間を行った調査研究。以前取り上げたJAMA誌の報告に通じる、多国籍なデータ検証となっている。
メインアウトカムは主要な心臓血管疾患(致命的および非致死的心筋梗塞、致命的および非致死的脳卒中、および心不全)、心臓血管死亡率、非心臓血管死亡率、および合計死亡。
詳しい方法は一気に省略して結論を述べると、果物、野菜、およびマメ科植物の摂取量が高いほど、総死亡率、心臓血管以外のリスクが低くなる、と予想された通り。 心臓血管以外の死亡率および死亡率の両方において1日あたり3〜4回相当のこれらの食事摂取(375〜500g /日に相当)で最大の利益が得られるようである。
今回日本からの参加はなかったようだが、背景に引用されているデータに世界三大医療市場である米国、日本、中国からのデータも引用されており、同様の結果が期待されることは想像される。
健康医療政策(経済効果)のみならず、国民の生活に資する研究や啓発は本来公的費用で調査研究され、そのアウトカムを利用した検証なども国主導、国際主導で行われるべきであると思うが、こういったテーマは厚労省やAMEDはウォッチしているのだろうか?目の前の作業にとらわれないスタンスをぜひご検討願いたい。
11/05/2017
宇宙空間滞在の脳構造変化への影響
国際宇宙ステーション滞在前後の脳機能MRI検査で脳構造の変化を検証したものです。
(Roberts et al., NEJM Nov2017).
研究対象が特徴的であり、得られた結果がおそらく世界唯一、有史以来初めての発見であること以上に何かを類推できることはありませんが、簡単に要約すると、
中心溝の容積の変化、頭頂点におけるCSF空間の容積変化、および脳の垂直変位に焦点を当て、長期滞在者(平均164.8日間)において、宇宙飛行前にくらべ中心溝の狭小化、脳の上方への移動、頭頂点でのCSFスペースの狭小化が生じていたことを示した、というもの。
参考までに比較対象に短期滞在者(平均13.6日間)でも同様に検証している。
脳構造以外にも、重力がほとんどないことで心臓が胸郭上方に移動し心拍機能に影響を与えることや、腎機能・体液浸透圧、電解質代謝、循環器・心機能、骨・筋機能、サーカディアンリズムに対する反応、放射線の影響を受ける代謝、ストレス適応・心理変化、などなど二も影響を受けることが想像され、それぞれの分野で研究が進められているようですが、こういった微小重力が我々人体に与える影響を検討し、対処することは百年、数百年後の宇宙旅行、宇宙移住に備えた科学的対策だなあ、と思うところです。地球上で生まれた生命、30億塩基対の二重らせんDNAが地球外の宇宙に適応できるほどに設計されたかどうか、遺伝子産物の頭脳による道具の発明や方法で対処するかどうか、ぜひ知りたいですな。
10/01/2017
遺伝子編集した蚊で感染症、マラリア撲滅を目指す
(Pike et al., Science)(NIHからの紹介記事はこちら)
これまでの同様の試みではその子孫系統、生殖系統を編集して蚊の生態を絶えさせようとしたものでしたが今回は、蚊の持つ免疫システムを過剰発現するように遺伝子編集し、その蚊を実験室内のケージの中で野生の蚊と一緒に共生させてみた、というものです。
マラリア原虫の定着に抵抗するよう、免疫系を活性化させられる蚊を自然交配の中で選択圧が高まり、それぞれの性パートナーから好まれるであろうとした仕組みを使って、ケージ内の蚊は9割以上遺伝子組換え体に置き換えられたというものです。
組換え体の寿命も影響せず、10世代以上にわたってこの状態を継続したとのことで、地域の蚊を一掃してしまう、消滅作戦よりは問題ないように見受けられますが、果たしてこの免疫賦活化した”スーパー”蚊は、人類の未来に影響せずにはおれないのではないでしょうか?同じ発想はペットなどの家畜たちに限らず、人間でも活用できるんじゃないか、と思える一方、その弊害、これまでに存在していなかった生物創造の力を得てしまった人間の科学を十分に考え、検証して使用する必要性を感じさせます。
9/17/2017
がん治療薬開発のお値段
以前の調査、the Tufts study、で推定していた費用が2.7billionUSD(27億ドル~3000億円)と言われていたけれど、今回調査した10の抗がん剤の平均ではその約4分の1、6.5億USD~700億円くらいだったという最新の調査結果を示したものです。片や利益は中央値としてmedian, $1658.4 million; range, $204.1 million to $22 275.0 million、200億円~2兆円超の稼ぎを出している実態を報告したもの。
なにやら商業主義を批判するもののようですが、一剤にかかる費用と利益だけでは網羅されない他の多くの開発薬剤やそのための活動があり数万に一つようやく上市に成功した製品でそれまでの費用を賄う、これからの開発に投資していっている現状をくみ取ってほしいなあ、と思った次第です。
栄養コントロールの重要性:お国柄の違い
内容は、肥満・糖尿病や心疾患など栄養コントロールが重要な疾患の診療外来の中で栄養管理や食事療法に関するカウンセリングが行われている実態があまりにも低いこと(12%程度)から医学部教育でも栄養管理に関する教育に充てる時間を増やすこと、日常診療時に簡単な栄養状態をアセスするツールをTableで提供していたり、何点かの要点にまとめたアドヴァイスを提案したり、といった内容です。
関連疾患に携わるファミリードクターは日々気にしていることだと思いますが、興味深かったことは、おそらく記事内容や引用情報源をたどっていくと、この記事のターゲットは糖尿病、肥満などで栄養制限をしたくてもうまく行えていない実態を取り上げていることである一方で、私たちの国では同じ問題が高齢者のサルコペニア、フレイル防止に高栄養、高タンパク療法を目指して、日常診療・在宅診療で活用できるのではないかと思います。
引用に合った情報ソースで、US政府が健康統計を指標化して、過去例えば2008年や2006年時のデータに対し、現在の栄養にかかわる指標や疾患教育プログラムの進行状況などを数値化して公共で利用できるようにしています。(以下の例)
Nutrition and Weight Status
こういう取り組みをまねることはとっても有意義だなあと感心した記事でした。
そして高齢者における栄養管理、在宅管理の経験は、これから高齢化社会を迎える他の先進国、発展国の未来に貢献できる活動であり、後世に残る記録や取り組みとして行ける期待がかかります。
8/26/2017
緩和治療における多職種連携
メタ解析を不勉強のためあまり詳しく解説できませんが(これをきっかけに勉強できそうです)、メタ解析で評価指標となる標準平均値差(SMD)の程度は0.2くらいでは小さく、0.5でまあまあ、0.8以上だと大きな違いであると認識されるようで、今回行った結果では、緩和治療スペシャルチームの介入は標準治療と比較して、”やや”患者さんのQOL改善に効果がある、 (SMD 0.16, 95% confidence interval 0.01 to 0.31)との結果でした。
期待していた緩和治療チームの介入は患者さんのQOLをよくする効果があまりきれいに認められなかったことは、疾患を広くとっていることや診断と病期に応じたケア提供であって症状がなくても介入されていることなどを理由として挙げていました。
ただ、がん患者さんやより早期の緩和チームの介入はもっと大きな効果サイズとなることが期待されています。( patients with cancer (0.20, 0.01 to 0.38)、especially for those who received specialist palliative care early (0.33, 0.05 to 0.61))
著者たちはDiscussionの中で、(“general palliative care for all plus specialist palliative care as needed”)としていくことは意味があるとの主張をしており、過度な介入も医療資源の無駄になりますが、必要な方への必要な治療は当然必要ですよね。
それほど重い病気でなくても、慢性疾患やロコモティブ症候群などで在宅生活を余儀なくされる方への多職種連携チームの介入の有用性について興味が広がりました。
Google searchと健康科学:13の理由
著者は、テレビドラマの影響による健康被害、生活被害を抑制したい考えかと思われますが、マスメディアはその影響力を無視できないことを改めて思い知らされます。我々が知り得ないことを知らせてくれる利益がある一方、害のないひとに危害を加えかねない諸刃の剣でもあり、自重も求められます。
8/20/2017
電子たばこで禁煙、絶煙へ
USの喫煙調査におけるたばこの喫煙、電子たばこの利用、禁煙行動調査を年次を追って追跡し(2001年~2015年まで)、最近の電子たばこの利用と過去の喫煙、禁煙者数の割合を比べたというもの。
16万人を超える調査対象者のうち、現役喫煙者は年によって漸減していて(!)、一番古い年だと3万9千名ほど、最新年で2万3千名ほど。
2014-2015年調査対象者=電子たばこの利用が活発になった年だと、現役喫煙者の38.2%、最近禁煙・絶煙できた人の5割近くの人が電子たばこを利用経験ありだったとのこと。禁煙への試みは、電子たばこユーザーは65%の人が試みた、との数字になっている。そして、禁煙・絶煙達成した方の割合がなんと電子たばこ未使用者に対し、8.2% vs 4.8%という驚異的な開きであり、健康、たばこ規制にかかわる政策立案者は考慮しましょう、との報告。
たばこ産業、企業からの支援を受けていない独立した研究とはいえ、今後も精査されうるテーマかなと思います。こういったデバイスは、未成年者への利用促進、単なるニコチン摂取だけでない悪用なども懸念されますのでね。
何はともあれ、喫煙のみならず飲酒も運動不足も、体に害がある、健康に悪いとわかっている行為は慎むべきです。ましてや周りに迷惑をかけることは、社会の一員として避けるべき行動だと、きちんと大人も含めて教育されるべきだと思います。が、そうはいっても時代背景によって、自分は大丈夫大丈夫、と考えがちです。お互いに気を付けましょう。
8/19/2017
生き甲斐って、大事だけれど。。。
- ”Purpose in life"= 7-item Purpose in Life subscale of the Ryff Psychological Well-being Scalesという7項目のアンケート
- 握力
- 歩く速さ
- ”生きる目的”をスケール化し、検証しようとする科学研究の発展
- 精神・心理的活動と身体的活動の関連性と制御可能性
経口避妊薬、授乳と関節リウマチ発症リスク!?
タイトルの通り、経口避妊薬を常用したりかつて使用していた方がその後に関節リウマチ(RA)を発症するリスクを検証してみた最近の研究です(Orellana et al, )。
ざっくりいうと、経口避妊薬を使用した経験のある方はそうでない(未使用者)方に比べRA発症リスクが若干低かった(オッズ比で0.87:95%信頼区間0.78-0.98)、長期(7年以上)処方でより強くリスクが軽減され、また、授乳経験はRA発症リスクにはやや低減傾向がみられたが調整後は影響なかったということです。
Case-control studyなので、先にRA患者さんを同定して、マッチングしたコントロールをおき、過去の経口避妊薬使用状況、授乳による育児経験などのアンケートとRAに関連する遺伝子多型まで調べたもの。スウェーデン在住の女性を対象にした大掛かり(ケース2641名、コントロール4251名)な研究です。
検証した結果は、冒頭で述べたとおり、経口避妊薬使用者で若干RA発症リスクが低下していたというもの。喫煙との関連性が認められ、経口避妊薬未使用、喫煙者でよりRA発症リスクは高かったようです。(経口避妊薬使用でも喫煙者はリスク高になっていました)
研究では抗シトルリン抗体陽性ーRAと陰性ーRAを層別解析していますが、詳細は省略します。
気になる機序ですが、閉経後にRAが発症し易くなること、閉経後のホルモン治療により逆にRA発症リスクが低下することから女性ホルモンの制御はRA発症に関連していることは経験則から想像されてきたようです。経口避妊薬、授乳はそれぞれ異なる機序で性ホルモンのホメオスタシスに影響し、異なる発症機序のRAに関連していると推測していたみたいですが、今回は経口避妊薬に関して予想された結果となったとのこと。授乳、プロラクチンやオキシトシンの制御ー抗炎症作用とRA発症はさらに層別が必要=分子、遺伝子レベルで将来の研究を待たないといけないようです。
ただし、益あって害のない薬剤、曝露はなく、経口避妊薬の使用による全死亡には影響がないようですが乳がんなどある特定の死亡について関連性が認められているので何事にも心配事が付きません。(関連記事)
7/23/2017
妊娠中の抗うつ薬の処方注意:生まれてくる子の自閉症とADHD
(自閉症のリスク by Rai et al., ADHDリスク by Man et al., )
以前から、動物実験、ヒトでの観察研究から妊娠中の抗うつ薬処方が、生まれてくる子の精神疾患への影響が議論されていたようですが、母親または父親の遺伝的背景によって交絡を受けていることが指摘されていました。最初のRaiさんの報告ではできるだけそういった未知の交絡を排除することを目指した解析、具体的にはLogistic regression modelで多変量調節したリスクを示す、Propensity scoreによるマッチング、自閉症を示さない兄弟姉妹、父親のNegative controlを用いた解析を行っています。これらの観察研究における弱点克服の様々な解析によって、交絡では説明できないリスクがconsistentに示されているので、妊娠中の抗うつ薬服薬は、子の自閉症発症に何らかのリスクがありますよ、といったメッセージです。
ただし、Editorial commentでも指摘されている通り、リスクがあるようだがその規模、予防できる規模は妊娠女性の2%に過ぎず、リスクベネフィットを勘案して治療されない母親の不安症、うつ症を顧みないといけないと注意しています。
ManさんたちのADHDでは、若干交絡因子の影響排除が甘いもしくは交絡の影響をうかがわせる結果となっています。実際妊娠期間前の服薬者においてもリスクが示されている、兄弟姉妹のNegative controlや抗精神病薬処方でリスクが示されない、など必ずしも妊娠期間中の抗うつ薬の曝露の影響を明らかにはし切れていないですが、他の研究が示していたnon-SSRIの方がSSRIよりもADHD発症リスクが高いことが示されており、それが選択バイアスなのかどうかわからないですが、関連性を示す示唆は与えています。
私の懸念は、妊娠中の服薬は抗うつ薬に限らず気を付けられるべきであることと、
近年の世界各国特に先進諸国でのADHDや自閉症自体の有病率の上昇は、常態化している抗うつ薬服用に限らず、様々な違法ドラッグの蔓延なども影響しているのではないか、その他の環境因子によっている可能性も含めて検討し、対策すべきかなと想像しています。
7/22/2017
痩せるだけではない、毎日じゃなくてもよい、カロリー制限の効用
肥満の人、あるいは予備軍、その自覚がある方々、若い女子たちは、どうにかカロリー制限して、炭水化物を控えて体重を減らそうと日々努力されている昨今ですが、決してスリムな容姿のためにではなく、自身の健康寿命を延ばそうと思ったら、決して肥満とは言えない方々も定期的なカロリー制限が健康にとって重要である、という趣旨で、それをヒトでのRCTや動物でのメカニズムから根拠づけられてきたことを紹介しています。
ただ、老いも若きも欲の制限は修行僧のような精神力と外界からの刺激に反応しない鍛錬が必要となります。日々のカロリー制限が肥満だけでなく、寿命や、心血管イベント、がんの発生などなど健康寿命を延ばす、より良い生活に欠かせないことはひと昔前から分かってきてはいたのですが、ここで紹介されている近年の研究ではその現実的な制約を考慮した設定がされています。週に一日や、2日間連続、あるいは月に数日間の絶食、あるいはそれに近いカロリー制限を継続することで様々な健康ベネフィットが生まれるということがわかってきました(記事内、”time-restricted feeding”)。
実際よくコントロールされた臨床研究の中では、カロリー制限することにより、自由に食事摂取対象群と比較して慢性疾患をよく抑え、血圧やIGF1、コレステロールまたAgingマーカーいずれも良好であることが示されてきました。こちらによくまとまっていましたのでついでに引用させてもらいます。
また、動物実験でもより子細なメカニズムや細胞レベルの影響がわかってきており、インスリン産生細胞(膵臓β細胞)の分化によるせい正常機能細胞の再生やインスリン分泌機能をよくすることなどが示されてきました。
地球上の生命の中で、特に大型動物が地上を征服している過程の中で、カロリー過剰を経験した種はおそらくなく、それへの対処を、進化上のプロセスではない対応を迫られている時代・種であり、おそらく長い目で見た際にはこれへの適応、選択圧を自然?環境から受けている時代であることを再考させられました。
7/01/2017
通勤手段と健康管理;男性諸君、自転車を恐れるな
少し前に、幹線道路のそばに住むと疾患リスクが高くなることをご紹介しましたが、
そこで少し触れた、通勤手段と健康リスクについて報告がされていたようなので簡単に取り上げます。(BMJ, Celis-Morales et al., )
UK Biobankに登録された26万人超の方々を、自転車通勤、徒歩通勤、これらのミックス、あるいはほとんど自家用車もしくは自宅といったカテゴリごとに被験者を分け、5年間以上追跡して、心疾患、がんの発生、これらによる死亡と全死亡を観察したというもの。
自転車通勤者も徒歩通勤者もいずれも心疾患、腫瘍リスクを下げていることは予想された通り。巷で言われる自転車と男性の性機能低下は別のところでも議論され、否定されているようなので、研究結果を信じるならば有益性があることが示されましたのでご安心のほど。
IQ知能指数とその後の運命
On 4 June 1947, about 94% of the Scottish population born in 1936 who were registered as attending school in Scotland (75 252) completed a test of general intelligence in the SMS1947 (n=70 805).
上記は論文Methods中の記載ですが、記載の通り1947年6月4日スコットランドの1936年生まれの小学生を対象に行った知能テストとその後の”68年間”の死亡、疾病を追跡した報告です。絶句ですね、、、。
ほぼ全人口94%をカバーしたということで、2015年12月まで追跡(個人と紐づいたデータが保管されていること自体がすごい!)したというものです。
知能テストのスコアが高いほど、その後の全死亡率が低くなったという結果(ハザード比 0.80 CI:0・78-0.81)のみならず、呼吸器疾患 (0.72, 0.70 to 0.74), 冠動脈心疾患 (0.75, 0.73 to 0.77), 脳卒中 (0.76, 0.73 to 0.79)といった結果になったとのこと。しかも、知能スコアの高さに依存したきれいなハザードとなっています。わかりやすい図を下にコピー引用させてもらいます。
社会にとっての恩恵をこの研究から甘受するためには、知能スコアに関わらず、疾患⚫死亡リスクを抑制する社会政策、違法薬物なども含む飲酒喫煙機会の制限、生活習慣改善の社会インフラ、安全な環境等を政府として提供しないといけません。選択する政策いかんで市民の生活、健康は如何様にも変容可能である歴史的事実を政治家、政策策定に関わる方々は最低限学んでほしい。
6/25/2017
ほぼ30年追跡の軌跡:日常の身体活動と痴呆症リスク
ロンドン在住のミドル層(35-55歳)で、1980年代(1985-88年)にリクルートしてきた1万名ほどの方を、その後2013年までに7回の身体活動性を調査、1997-2013年までに4回の認知能力を調査して、身体活動量のlongitudinalな変化(論文中では”軌跡”という言い方)と認知度、痴呆症発症リスクを検討し、平均期間26.6年追跡し、痴呆症発現の有無を活動性ごとに比較検討したもの。デザインだけで、自分では行うことができない研究計画であること、研究継続性を織り込んだ計画でないととても行えないものになっています。
研究の主目的は身体活動性が高いことは痴呆症リスクを下げられるか、関連性を見るものですが結果はネガティブで、活動量の多さや、活動の強さごとに認知機能と痴呆症発症リスクを比較しましたが関連性が認められないことが示されました。活動量と年齢層ごとの認知機能へのは一部で認められていますが、総じては関連性がない結果となりました。
しかしながら、認知症以外へのリスク、例えば前出のCVイベントや全原因死亡などは、少しでも運動、身体活動を上げることは有用なようですので、この結果に落胆せずに、日々の努力の継続を望みます。
いや、しかし30年間追跡、すごいの一言です。
6/11/2017
家族、友人、孤独と病
社会的孤立は以下の三つの質問:1)一緒に暮らしている人がいるか、2)家族や友達があなたの家を訪れる頻度が月に一度あるかどうか、3)一週間に一度レジャーや社交イベントに参加しているかどうか
孤独:孤独に感じるかどうか、親密な誰かを信じることができるか、の頻度が少なくとも数か月に一度あるかどうかで判定している。
対象者集団の9%にあたる42,548名、あるいは6%にあたる29,442名が社会的孤立、孤独を感じていることが明らかにされたことです。
一般人(と思われる)方々から少なくない方々が社会から閉ざされている、と感じている社会は果たして高度な科学や技術が発展してきた社会として正しい発展をしているのでしょうか?医療は人々の健康、寿命をよりよくすることを目的に施されます。同時に社会に対する還元を果たしていると思います。同じくこういった研究も、その結果から疾病負担への影響を議論するためでなく、むしろ死亡、疾病リスクの要因となりえるリスクを取り除く取り組みに発展していってほしいです。
ぜひ、継続的な調査研究が望まれ、むしろこの孤独孤立を個々の市民が感じられなくなる社会環境を達成することを提言してほしいと思います。
5/28/2017
遺伝子検査のこれから
遺伝子原因疾患に限らず、すべての診断が機械的になされるようになるのは前回のAIの発達を待たなければならないかと思っていますが、今現在で患者自身、あるいは患者予備軍自身で診断可能(理解可能)な疾患があることも事実です。
そんな現代の医療環境、医科学発展の中、FDAが23andMe社の Personal Genome Service Genetic Health Risk (GHR) testsの販売(上市)に許可を出したプレスリリースされ、それに反発する記事がJAMA誌のOnline版に出ていたので取り上げて、思案してみたいと思います。(FDAプレスリリース、JAMAの記事)
パーソナルゲノム解析受託の会社などのまとめについてはこちらの記事にまとまっているようなので参考ください。日本だとこちらを参考までに。
JAMA誌の記事の要旨は、そういった検査の精度や背景疾患などを無視した解釈は患者本人にとっても、検査の結果に直面して発生する治療を引き起こし、医療資源消費の観点で治療者や保険支払者にとっても利益がなく、安易に検査を行うべきでないし、医療専門家の指示のない検査を法的に禁止すべきのような提案をしています。
ただ、一方で検査自体の正確性、疾患&検査結果の解釈を理解できるところまで市民のリテラシーをきちんと掘り起こせるよう、この分野に携わる、開発する方々が取り組めることができるならば、その限られた医療資源消費を患者本人に分散することで必要な治療に集中できることになり、より効率的になるのかと想像できます。むしろ、こういうことをサポートすることができる職業が必要かもしれません。規制当局、医療者、市民(患者)がより深く議論できるような時代が始まるのかなあと感じています。
5/21/2017
AIによる診断、治療適正化、治療法探索の未来
大きくは①診断、②治療法の最適化、③新規治療法探索への分析&情報提供を目的にした活用が進められている。
このような時代においては、人間ができることはひたすら上記の活用を目指すべく、機械学習法をより深く、適正に開発していくこと、活用しやすくするための構造化を整備すること、などIT-basedの知識集積が求められていく一方で、そのためにもより科学者としてのスキル(仮説設定、検証法開発、好奇心)とその経験が求められていくことが推察され、その部分に自身も研鑽したいし、後進育成に力を入れていきたいと考える。
少し前のNature誌で、悪性黒色腫(メラノーマ)の診断に機械学習法が取り上げられ、最近のLancet誌で取り上げられていた。(参照記事、Nature誌、紹介記事in Lancet)
メラノーマの疾病負担は記事内の記載の通りで、白人で高く、メラノーマ以外の皮膚がんはさらに20倍高いとされている。
”in New Zealand and Australia (50 and 48 per 100000 population, respectively) and projected to increase in the UK (from 17 to 36 per 100000 population) and in the USA (from 29 to 32 per 100000 population) between 2007–11 and 2022–26.1 Non-melanoma skin cancer is up to 20 times more common than melanoma worldwide.”(記事内引用)
寛解を目指す治療法は確立されておらず、他の悪性腫瘍と比べて予後も悪いとされているがステージ初期の発見は予後は良く、早期診断が重要とされている。米国における皮膚がんの費用負担は年間80億ドル(8000億円以上!)を超え、まさにアンメットニーズになっている。
このようなメラノーマの診断に、従来、ダーモスコピーによる画像診断、病理診断をもとに専門医の所見をふまえなされてきたが、画像をベースにしたDeep convolutional neural networks (CNNs)を駆使したComputer-based診断法を皮膚科専門医の診断をもとにValidateを試みたという記事。
Carcinoma, melanomaとの区別を学ばせ、特異性&感受性カーブのAUCで0.94以上を達成しているとなっており、まずまず実用性のあるプログラムを組めてきたと考えられる。
さらに踏み込んで画像取得と診断をスマートホンアプリで行えるようなことも考えて、論文の中でも提案されているが、現在までに有用なアプリケーション、(患者ベースの診断)はまだまだ確立されたとは言い難いようだ(上記のLancet誌紹介記事内および参考記事)。
とはいえ、時代は前進しつつあることを身に染みる報告である。
4/29/2017
気候変動と健康への影響
気分一新、雑誌社も新しい雑誌をオープンされたようなのでそこから本日のお題を提出させてもらいます。
Lancet Planetary Healthという雑誌が刊行され、干ばつの発生と健康への影響を調査した研究論文が報告されました(記事リンク)。
2000年から2013年と非常に長期に、しかもDailyベースでMedicareの請求情報と干ばつ情報(US Drought Monitorがデータソース)の関連性を見たというものになっています。
アウトカムは非干ばつ時期と比較して干ばつ時期(干ばつのひどさで5分類)の死亡、循環器、呼吸器による入院をみたものです。
結果は、非常にひどい干ばつ期に死亡が若干増加すること、逆に呼吸器系の入院は減少すること、循環器系の入院には変化なしだったようです。干ばつ期間が少なかった地域ではそうでない地域に比較して死亡、循環器系の入院が増加することも推定しています。
USの最近の気候変動による社会への影響を考え、また、介入、暴露が決して薬剤や治療者だけではない環境因子を考えた試みかと思います。ジョン・スノウのコレラ研究や、農薬の害悪の端緒となった「沈黙の春」同様、この記事から考えさせられる、発展するリサーチクエスチョンは尽きなく感じました。
3/25/2017
お医者さんたちの医療資源の使い方の違いと患者さんへの影響ー医療政策者必読
タイトルに興味を持たれた方、こちらのブログをぜひご覧ください。
研究者ご本人の解説があるのでご紹介にとどめます。
昨今の最適使用推進ガイドラインみたいな制度側の取り組みにもかかわってくる、興味深いレポートですね。
高齢男性の悩みは尽きない、、、
少し前の記事では男性ホルモン補充療法を取り扱いましたが今回は、前立腺肥大療法とうつ症、自殺の関係を取り扱った論文のご紹介です。
前立腺肥大の弊害は他の専門サイト(例えばこちら)で詳しいので割愛しますが、
組織学的な前立腺肥大は、30歳代から始まり、50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%の人で認められるとされています。夜間頻尿や残尿感が日々の生活で発生し、著しくQOLを下げることが知られています。私自身や実家の父などにもふりかかってくるであろう、身近な症状です。
この障害には男性ホルモンの影響が考えられており、はげ治療にも用いられるようになってきた、5α還元酵素阻害剤などが治療では使われています。テストステロンから変換されるジヒドロテストステロンが前立腺細胞の増殖に働いていることが知られており、5α還元酵素阻害薬は、前立腺細胞の中でテストステロンをジヒドロテストステロンに変換する5α還元酵素の作用を抑えることにより、前立腺細胞の増殖を抑制し、その結果肥大した前立腺が縮小します。この薬を長期間服用することにより肥大した前立腺が縮小して、排尿困難の症状を改善します。
今回の研究ではこの前立腺肥大症の治療に用いられる5α還元酵素阻害剤使用者における自殺やうつ症、自傷行為について薬剤疫学検討を行ったものす。
対象はカナダのオンタリオ州の66歳以上男性、全人口ベース(約1300万人)に5α還元酵素阻害剤使用開始した方と、Propensity scoreでマッチさせたコントロール対照研究です。2003-2013年で9万3千人が収集されました。
結果は、治療者、薬剤提供者、患者さんにとって幸いなことに自殺に関してはこの薬剤による影響は認められなかったとの結果でした(ハザード比0.88, CI 0.53-1.45)。
しかしながら、自傷行為は処方から18か月内でハザード比1.84, CI 0.53-1.45,うつ症はおなじく1.94, CI 1.73-2.16となり、うつ症は処方から18か月以降も3年以上であっても5α還元酵素阻害剤非使用者に比べて発症リスクが高くなることが示されました。
もちろんこの薬剤使用により神経内分泌的な変化や神経機能、細胞機能変化が起こっていることが様々な基礎実験などから推定されていますが、本当の機序説明はクリアになっていないようです。今後の機序解明によって対策できることが期待されます。
3/12/2017
週末戦士たち、生活習慣病予備軍たちへの応援歌
習慣的な運動量を4つのカテゴリに分けて:①何もしない、②若干の運動(直訳では不十分な活動)、③週末戦士、と④常習的なトレーニング者に分けてそれぞれの死亡アウトカムを過去1994-2012年のデータから検証したもの。
中等度の運動を週に150分間以下もしくは強度な運動を週に75分間以下が②不十分な活動に分けられ、
上記の活動時間以上を1-2セッションが③週末戦士、3セッション以上が④常習トレーニング者に分けられています。
予想通り③④の方々は、①の集団に比べて全疾患による死亡、循環器疾患による死亡、がんによる死亡すべてで30%以上のリスク低下を示していました。④の集団はいずれの死亡もこれらの群間の中で最もリスクが低かったですが、中でも循環器疾患にいたっては5割近いリスク低下を示しました。
一方で②の”不真面目”だが、何かしら運動をしている集団でも、ほぼほぼ③の集団と同程度のリスク低減を示しており、何やら週末戦士の面子丸つぶれのような有態でした。
ただ、裏を返せば、今現在不摂生な週末を送られている予備軍の方にでも、手短なところから、例えば一週間にウォーキング30分、もっと敷居を低くして言えば、散歩30分間のような運動でもいいから取り入れるだけであなたや家族の健康が守られるかもしれない可能性を示してくれました。
我が家でも取り入れたい、明日からでも始められる生活還元型研究レポートでした。
3/11/2017
採食健美 理性と欲との攻防
個々の食材と疾患や死亡率との関連性は多くの研究がされているが今回そういった前向き試験などのメタデータ、最適な栄養摂取をしている集団の分布を調べた観察研究データ、疾患特異的死亡率などのデータを総括的にモデルに入れ込んで検証したもの。
結果自体は予想された通りで、食塩過剰摂取、次いでナッツ類の摂取不足、加工肉の摂取過剰、オメガ3脂肪酸の不足、野菜不足、果物不足、過剰な糖分飲料、の順で循環器代謝死亡に影響があったとなっている。
ただ、この十年くらいの間で、循環器代謝死亡は四分の一くらい減少していて、その大きな寄与は多価不飽和脂肪酸やナッツ類不足または過剰な糖分付加飲料摂取が減少したことが挙げられている。また男性の方が不摂生な食事とその代謝死亡率への影響が高いこと、青年壮年期世代(25-54歳)、教育経験水準レベル(高卒またはそれ以下)や黒人で若干影響が高くなることも併せて示されている。
一つの食材、栄養因子にとらわれた研究だとその他の食材・栄養や環境因子など交絡因子の排除が問題となるが、ここでもすべてを除き切れているとは言えない。だが最大限努力はしたと思われるので一定の評価はされていいかと思われる。測定バイアスについても限界があるが、私はそれ以上に同じ食材でも中身の栄養価や添加物の違い、同じ栄養価摂取量でも個人間での代謝による体内への摂取量の違いといった、摂取物のバラエティさ、摂取者の背景因子の違いはもっと積極的に考えてもいいかと思っている。同じような生活環境下でも体内栄養利用への影響(縦、横の成長)はとても大きいことは、その先の生理学的、病理学的影響も大きくなる気がしてならない。総体としてのメリットデメリットは分かったが、日々の食材選びや安心して摂取できる食品の監視は、医薬品程とはいかなくても市民がもっと関心を払うべき大事なことなのかもしれない。
3/05/2017
幹線道路そばに住む市民はボケやすい!?
昨日あげたテストステロン療法における認知機能改善を検証した研究に関連して目についたので、手短にご紹介。
Lancet誌の2月の記事で、カナダのオンタリオ州(人口1360万人)のカナダ生まれの市民のうち、20-50歳の市民437万人の多発性硬化症、、55-85歳の市民216万人の痴呆、パーキンソン病発症リスクを居住地域:幹線道路からの距離50m未満、50-100m、101-200m、201-300m、300m以上、に分けて解析したもの。
空気環境汚染(NOxやPM2.5など)や騒音が上記の3つの主要な神経変性疾患に影響を与えている可能性を検証した初めての試み。これだけ大規模で縦断的に検証されたのは初めて。
結果は、痴呆に関しては筆者らの予想通り、幹線道路からの距離に応じて発症リスクが高いことが示されている。距離に応じてその相対リスクが増加すること、感度分析でもその関連性が示されたことから、相対リスクはわずかだが、頑健性のある結果であると主張している。
パーキンソン病、多発性硬化症は残念ながら関連性は認められなかったようだ。
US、カナダなど車生活が基本となる都市、まちでの神経変性リスク同様、
日本の首都圏では駅に近い=徒歩、運動時間が短いことと慢性疾患との関連性など、この研究から発展できるアイデアは尽きない。
3/04/2017
男性ホルモン療法の効用 男性更年期障害にはまだ立ち向かえない!?
それに解を得ようというのが本日のお題です。病理的に性腺機能不全ではない男性でのテストステロン療法がどのような効果をもたらすかを検討した研究の紹介です。
最近のJAMA誌に2報、JAMAの姉妹紙(JAMA Internal Med)にも2報、7つのプラシーボコントロールのランダム化試験”Testosterone Trials"からのアウトプットとして報告されています。性腺機能、身体機能に対する改善効果はすでに報告されていますが(NEJM, 2016)、その他の健康アウトカムに関して続報となります。
結論だけ要約すると、65歳以上の低テストステロン血症の男性に対し、テストステロン療法(経皮ジェルを一年間継続、プラセボ群に対し)は、
- 生殖機能に対しては効果あり、身体活動や活力はあまり有意な効果が認められなかった(NEJM, 再掲)
- 記憶障害や認知機能に対しては改善効果なし(JAMA, Resnick et al., )
- 心血管障害(冠動脈プラーク形成)に対しては非石灰化プラークボリュームを増加させるが石灰化プラーク量は変えない(JAMA, Budoff et al., )
- 軽度貧血(理由不明など)に対してはヘモグロビン増加(貧血改善)効果(JAMA Int Med, Roy et al., )
- 骨密度、骨強度増加作用(JAMA Int Med, Snyder et al., )
2/18/2017
先進7か国における社会的地位と非感染性(慢性)疾患死亡率の関連性
”Global Action Plan for the Prevention and Control of Noncommunicable diseases 2013-2020”
2/11/2017
医者は患者を選ばない、患者は医者を選びたい
すでにプロメディアの多くが取り上げたのと研究グループのおひとりである研究者本人の解説があるようなので詳細な紹介は割愛しますが、米国のメディケアのデータを使用して治療を行う医師の背景の違い(性別と出身国)による患者アウトカム(入院から30日以内の死亡率と再入院率)を検証した研究が昨年末から今年2月にかけて2報報告されていた内容に関して考えてみたいと思います。
報告の一つ目は
”女性医師の方が男性医師よりも患者の死亡率や再入院率が低い”という、結果を示したもの、
二つ目は
”アメリカ人医師(アメリカ国内の医学部出身の医師)と比べて、担当医が外国人医師(海外の医学部出身で、米国の医師免許を取り直して米国で働いている医師)であった場合、患者の方が死亡率が低いことが明らかになった。リスク補正後の30日死亡率は、外国人医師が11.2%であったのに対して、アメリカ人医師は11.6%であり、統計学的に有意な差であった(補正後のオッズ比0.95、95%信頼区間0.93~0.96、P<0.001)。一方で、再入院率は、外国人医師とアメリカ人医師で差はなかった。リスク補正後の医療費は外国人医師の方が若干高いと言う結果が得られた。この研究結果は英国医師会の学会誌であるBritish Medical Journal(2017年2月3日オンライン版)に掲載された。”
(両方とも)引用元:津川友介氏のブログより転載
というもの。「死にたくなければ~」と少々過激な表現でタイトルされてニュースにもなったのでご存知の方も多いかもしれません。
結果は上に簡潔に述べられた通りで、一つ目は生物学的な性の違い、二つ目はちょうど泥沼試合の様相となっているトランプ新政権の移民封鎖政策にもかかわってくる内容となっており、これらの結果を米国の医師、患者たちはどのように受け止め、また社会はどのように活用していけるのか考えさせられるものです。
それぞれの論文では、入院患者のみを担当する内科医、ホスピタリストで層別解析した場合にも同様の傾向を示したことから、主病名や併発疾患、背景情報などで背景情報、特に重症度を補正した結果に加え、患者を選べない環境にあるホスピタリストの中でも、これらの性別、出身国の違いが患者さんの予後に影響を与えていることを示したものとなっています。
確かに多くの他の研究者たちが指摘している通り、両研究ともコンマ4%(0.4%)程度の差でサンプルサイズが莫大であることから統計学的有意差と判定されていることは、臨床的な意味があるのか、との批判を受けていますが、研究を行った本人は”死亡率0.4%とは過去10年間の死亡率の改善とほぼ同じレベルです。過去10年間に開発された薬や医療機器、ガイドラインなどを全部合わせてものと同じだけの効果ですので、「臨床的に意味がある差」である”と考えているようです。
しかし、死亡率改善率の数値の意味は、これまでのグローバル社会の中で10年かけて行ってきた成果ほどの差があることは理解できましたが、統計的な有意差はサンプル規模で推定されるものなので差が0.4%あることよりも”有意に”差がついたことをあまり重要視せずに解釈すべきであるのかと思います。
ですので、死亡アウトカム期間をそれぞれ適切に設定された各主病名ごとに観察期間にもっと幅を持たせた解析の方がより有用であると感じました。
研究アイデアとしてはとても印象的で、多くの興味を引き付けたことは成功だと思いますが、本来のリサーチクエスチョンとしては治療者の背景の”何が”よりも治療行為のどういう側面が予後に影響するのかまた別のリサーチクエスチョンに立つことの方が興味を覚えました。
いずれにしてもこのような着眼点はとても素晴らしく、日本での同様のエビデンスに期待したいです。
2/04/2017
きっかけとこのブログで目指すもの
きっかけは、①年齢的にも一つ節目を迎えたのでなにか新しいchallengeをしたかったこと、②仕事や業務に縛られずにライフワークと考えている興味分野(ライフサイエンス、健康科学)での活動をプライベートの生活のなかにも取り入れてみようと思ったこと、③数年前、基礎研究者としてやっていたころに接していたメディアなどの情報に比べ、臨床研究に関する情報や薬剤情報が堅苦しく、行政ニュースに近いものがしていて不満を感じているところです。プロメディアの情報は多いけど、機械翻訳的しすぎていて、研究者側の想像力や発送、理想・妄想に触れる情報発信があまり多くないように感じています。
1/29/2017
ブログを始めてみました
あまり頻発に更新できないかもしれませんが少しずつ始めていきたいです。
次回からは始めるきっかけになった出来事、人物についてご紹介しようと思います。




















