すでにプロメディアの多くが取り上げたのと研究グループのおひとりである研究者本人の解説があるようなので詳細な紹介は割愛しますが、米国のメディケアのデータを使用して治療を行う医師の背景の違い(性別と出身国)による患者アウトカム(入院から30日以内の死亡率と再入院率)を検証した研究が昨年末から今年2月にかけて2報報告されていた内容に関して考えてみたいと思います。
報告の一つ目は
”女性医師の方が男性医師よりも患者の死亡率や再入院率が低い”という、結果を示したもの、
二つ目は
”アメリカ人医師(アメリカ国内の医学部出身の医師)と比べて、担当医が外国人医師(海外の医学部出身で、米国の医師免許を取り直して米国で働いている医師)であった場合、患者の方が死亡率が低いことが明らかになった。リスク補正後の30日死亡率は、外国人医師が11.2%であったのに対して、アメリカ人医師は11.6%であり、統計学的に有意な差であった(補正後のオッズ比0.95、95%信頼区間0.93~0.96、P<0.001)。一方で、再入院率は、外国人医師とアメリカ人医師で差はなかった。リスク補正後の医療費は外国人医師の方が若干高いと言う結果が得られた。この研究結果は英国医師会の学会誌であるBritish Medical Journal(2017年2月3日オンライン版)に掲載された。”
(両方とも)引用元:津川友介氏のブログより転載
というもの。「死にたくなければ~」と少々過激な表現でタイトルされてニュースにもなったのでご存知の方も多いかもしれません。
結果は上に簡潔に述べられた通りで、一つ目は生物学的な性の違い、二つ目はちょうど泥沼試合の様相となっているトランプ新政権の移民封鎖政策にもかかわってくる内容となっており、これらの結果を米国の医師、患者たちはどのように受け止め、また社会はどのように活用していけるのか考えさせられるものです。
それぞれの論文では、入院患者のみを担当する内科医、ホスピタリストで層別解析した場合にも同様の傾向を示したことから、主病名や併発疾患、背景情報などで背景情報、特に重症度を補正した結果に加え、患者を選べない環境にあるホスピタリストの中でも、これらの性別、出身国の違いが患者さんの予後に影響を与えていることを示したものとなっています。
確かに多くの他の研究者たちが指摘している通り、両研究ともコンマ4%(0.4%)程度の差でサンプルサイズが莫大であることから統計学的有意差と判定されていることは、臨床的な意味があるのか、との批判を受けていますが、研究を行った本人は”死亡率0.4%とは過去10年間の死亡率の改善とほぼ同じレベルです。過去10年間に開発された薬や医療機器、ガイドラインなどを全部合わせてものと同じだけの効果ですので、「臨床的に意味がある差」である”と考えているようです。
しかし、死亡率改善率の数値の意味は、これまでのグローバル社会の中で10年かけて行ってきた成果ほどの差があることは理解できましたが、統計的な有意差はサンプル規模で推定されるものなので差が0.4%あることよりも”有意に”差がついたことをあまり重要視せずに解釈すべきであるのかと思います。
ですので、死亡アウトカム期間をそれぞれ適切に設定された各主病名ごとに観察期間にもっと幅を持たせた解析の方がより有用であると感じました。
研究アイデアとしてはとても印象的で、多くの興味を引き付けたことは成功だと思いますが、本来のリサーチクエスチョンとしては治療者の背景の”何が”よりも治療行為のどういう側面が予後に影響するのかまた別のリサーチクエスチョンに立つことの方が興味を覚えました。
いずれにしてもこのような着眼点はとても素晴らしく、日本での同様のエビデンスに期待したいです。
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