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3/04/2017

男性ホルモン療法の効用 男性更年期障害にはまだ立ち向かえない!?

近年欧米の高齢男性の間で男性ホルモン、テストステロン療法が流行っているようです。イントロ記事によるとUS、カナダでは最近(2011年)のテストステロンの売上げ(使用)が2000年にくらべてそれぞれ約10倍、40倍増えていることからもうかがえます(ref.Handelsman et al., )。その他の欧米各国でも着実な成長市場となっているようですね。テストステロン療法により、性腺機能低下症の治療に用いられ、筋肉量、筋力、骨密度、性欲、健康活力の改善が期待されています。勃起不全に対してはPDE5阻害薬の作用を増強するといわれています。病理的な理由による性腺機能不全の方への治療だけではなく、近年の需要増加理由、加齢によるテストステロン低下、性腺機能低下、いわゆる男性更年期障害に対して本当に効果があり、安全性に懸念がないのかが問題になってきているようです。



それに解を得ようというのが本日のお題です。病理的に性腺機能不全ではない男性でのテストステロン療法がどのような効果をもたらすかを検討した研究の紹介です。
最近のJAMA誌に2報、JAMAの姉妹紙(JAMA Internal Med)にも2報、7つのプラシーボコントロールのランダム化試験”Testosterone Trials"からのアウトプットとして報告されています。性腺機能、身体機能に対する改善効果はすでに報告されていますが(NEJM, 2016)、その他の健康アウトカムに関して続報となります。
結論だけ要約すると、65歳以上の低テストステロン血症の男性に対し、テストステロン療法(経皮ジェルを一年間継続、プラセボ群に対し)は、

  • 生殖機能に対しては効果あり、身体活動や活力はあまり有意な効果が認められなかった(NEJM, 再掲
  • 記憶障害や認知機能に対しては改善効果なし(JAMA, Resnick et al., )
  • 心血管障害(冠動脈プラーク形成)に対しては非石灰化プラークボリュームを増加させるが石灰化プラーク量は変えない(JAMA, Budoff et al., )
  • 軽度貧血(理由不明など)に対してはヘモグロビン増加(貧血改善)効果(JAMA Int Med, Roy et al., )
  • 骨密度、骨強度増加作用(JAMA Int Med, Snyder et al., )
を示しました。低テストステロンによる弊害(性腺機能、男性らしさ、心血管イベント、肥満、骨粗鬆症、うつ、認知症)が言われつつ、過剰なテストステロンでも心血管イベントを惹起している(Albert et al., )、大方否定的になってきましたが前立腺がんを引き起こす可能性、などなどホルモン療法の是非はまだ問題も残されているようです。今回示された結果は、性腺機能改善効果以外はさほど大きな有用性が示されなかった一方、心血管イベントなどの懸念は長期モニタリングにあまり適していない検討(冠動脈CT)となっており、決して懸念を払しょくできていない可能性が残ります。
ホルモンそのものの補充はもちろん直接的に生体が渇望するニーズですが、もしかしたら間接的にまだ残っている性腺機能、ホルモン分泌機能を向上させたり体内のテストステロン残存濃度を持続させる治療法のほうが、より安全性の高い、生理的に近い機能改善が期待できるのではないかと考えさせられる報告でした。

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