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5/20/2018

腸内フローラと疾病リスク

JAMA誌の紹介記事から(Komaroff, JAMA, 2018)、昨今の免疫系学会でのトピックである、腸内細菌と宿主への影響、関与する免疫系(Th17細胞など)とその疾病への影響を紹介している。
主に代謝疾患、動脈硬化症に着目しその機序、関連症状(高血圧、炎症、脂質代謝など)と治療法の具体性について議論しているが、一般の人にとっても身近で、すぐできそうな健康ニュースです。

腸内細菌叢(フローラ)の状況によって影響が言われていること:

  • 摂取する食事の消化吸収に影響し、肥満のリスクを高める
  • 酪酸産生菌より酢酸産生菌はインスリン抵抗性を惹起することによる2型糖尿病発症リスクを高める(上記二つの影響に関する論文JAMA2017
  • 胆汁酸産生を抑制し、その結果LDLコレステロール値を高める=高脂血症、高コレステロール血症
  • 高ナトリウム食による高血圧にTh17細胞系の関与があり、腸内細菌の関与が疑われている(関連論文Nature 2017) (この発見以外でした!)
  • 炎症の誘発、血管内皮細胞の機能悪化
  • プラーク内の泡沫細胞を活性化させるtrimethylamine N-oxide (TMAO)の前駆物質をコリンやクレアチニンから産生する
食事やサプリメントで腸内環境を整え、規則正しい生活を行い、自発的、自身の体内から健康・活力維持する環境を整えるという発想は、漢方治療やヨガなどに通じる東洋医学的で日本人にはなじみやすいですね。今後もエビデンスを作りつつ、実践するのもよりよい健康生活に欠くことができません。


ダウン症の出生前診断と判断

JAMA誌のコメント記事に、表題のような、ダウン症の出生前診断とその後の中絶について、オハイオ州で禁じる法律が成立したことを伝える記事がありました(Reingold et al., JAMA, 2018)。

妊産婦のご家族や、これから子供を持ちたい方以外にはあまりピンと来ないかもしれませんが、少なくない方々にとってこういった遺伝性疾患(高い精度で予測できる診断、検査の確立された疾患)と、それに伴う社会の視点(優生と言って差し支えないでしょうか)のバランスをとる=議論し続けていく、ということは、今後もダウン症に限らず必要なことかと思います。

米国の他の州(文中から、Indiana, Louisiana, and North Dakota 州)でも同様の法律、ダウン症に限らず遺伝子疾患による中絶禁止の法律が存在(あるいは提案中)していること、このオハイオ州の法律は連邦からは差し止めの判断がされたとのことです。

ダウン症の現状:
米国では700人に一人の確率でダウン症を発症、妊婦の年齢はそのリスクを上げることが知られています。認知機能に障害がありますが、その影響はさほど大きくないようです。ひと昔前までの生命予後の悪さは大幅に改善され、働く環境、生活をする環境も整えられてきました。

研究論文の紹介ではありませんが、医科学の発展だけを追及してはいけない点、常にこういった応用における議論を考慮していく必要性を感じさせられました。

5/06/2018

ビタミンDの抗発癌の効用:日本人データ

最新のBMJ誌に日本からの報告、国立がん研究センターの多目的コホートからの報告があったのでご紹介します(Budhathoki et al., BMJ, 2018)


ビタミンDの充足(体内血中濃度)、適切な太陽照射ががん細胞の増殖を抑制したり、発癌を抑えるということが動物実験や人の観察研究でも示唆されてきていますが、今回この日本人コホートでは、40歳以上の多目的コホートに登録、血液サンプルを保管された方々のなかで、最終的に3301名の発癌患者(ケース)とそのランダムに選んだコントロール4044名の方で、血中ビタミンD濃度と発癌リスクを比較したというもの。
論文中記載ではNested case cohort studyとあるので、上記のサブコホートをコントロールとしてとっていないし、サブコホート内でケースが発生しているのでどのような比較をおこなったか詳細は不明である。
血中ビタミンD濃度を四分位に分けて、最低のものをリファレンスに置いた比較で、がん全体の発症は、ビタミンD濃度が高いと有意に抑えられることを示したが、各部位がんの発癌リスクでは肝臓のみ有意な抑制ハザードを示しその他のがん(過去の報告で言われてきた大腸がん、前立腺がんや肺がんなど)は違いがみられなかった。

(国がんセンターHPからの引用)

ベースライン時のビタミンD濃度はその後の生活の中でどのような変化を示すのか(この研究ではベースラインのみ)、各被験者の追跡期間の違いは補正されているか、遺伝的背景(ビタミンD変換酵素や受容体などのSNPs)をもっと探索してもよい、十分な参加者がいるコホートなので単純にNested case control studyでの実施を検討できたのではないか、などいろいろと突っ込みどころは残るが、これまでアジア人でのデータがなかった、その他の部位がんデータがなかったところに一石は投じることができたものになっている。

閉経年齢と食事の影響

最近のBMJ関連誌から、表題の通り女性の閉経年齢とそれまでの食習慣を関連付けて検討してみた研究のご紹介(Dunneram et al., J Epi Comm Health, 2018)

UKイングランド、スコットランド、ウェールズの登録された40-65歳の女性コホート,1995~1998年にベースラインデータを収集し、4年間の追跡を行って解析したというもの。
対象14, 172名のうち914名が自然閉経に至っており、平均年齢は50.5歳、それまでのデータでも51歳ということになっています。
昨今健康に良いとされる魚や新鮮なナッツ類をよく食べている女性で3.3年、0.9年(per portion/dayという言い方ですが)、閉経が遅れる傾向があったようです。炭水化物食(パスタや精米)は逆に1.5年ほど早まるという結果でした。

閉経という人体の一大変革期における変化は非常にダイナミックで、エストロゲンの低下、アンドロゲン・プロゲステロンの増加をもたらし、骨粗しょう症やうつ症との関連が示唆されています。閉経の遅れは、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がんとの関連性も言われており、適切な時期の閉経とそのホルモン制御が今後重要な成人医学における課題になっていくことでしょう。特に高齢化社会、その後50年間の生活を支えていくうえで重要になっていくことは容易に想像できます。

この研究自体が比較的新規性をもって公表されましたが、今後は最適なホルモン環境、食生活の提案などもこういった研究からなされていくことでしょう。また、女性だけでなく、男性も含めた更年期に対する不安を払拭させるような、リスク回避の模索も別の研究テーマになっていくのかなあと期待しています。

5/02/2018

抗コリン薬の副作用:認知症への影響

抗コリン薬は胃痛や乗り物酔い抑制に使われたり、一部のパーキンソン病の治療薬として使用されている。この薬剤の使用による認知症状への影響を、nestedケースコントロールスタディで検討した報告がBMJ誌にあった(Richardson et al., BMJ, 2018)のと、この記事に対するEditorialもご紹介します。
UKの外来、多くはプライマリーケアの診療情報データべースであるClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用いた研究。4万名の認知症患者を特定しそのマッチングしたコントロールを1対7で置いた比較。ケースの対象時点で該当しなければ前後に認知症(ケース)となったかたもコントロールとして組入れられるデザインである。
曝露された抗コリン薬の処方量やクラス別の解析などもされているが概ねの結論は、抗コリン薬曝露は1.1倍前後のオッズで認知症アウトカムとなるとの結果である。本当かどうか今後の追跡が必要であるが、15-20年前における曝露でも同様のリスクが推定されている。

抗コリン薬の過剰摂取や三環系抗うつ薬との併用によって中毒状態となるとせん妄、昏睡、けいれん、厳格、低血圧、高熱などの症状が生じるとのことであるが、使用経験、その作用機序から上記の認知症リスクに対しても警鐘を鳴らし、適切な処方を目指すことを訴えている。