こちらもLancet 姉妹誌、Lancet Public Healthからのご紹介(Chiu et al, Lancet Public Health 2018)。
内容は、ひとり親、特に父親の場合の死亡リスクを評価しようとしたものです。
これまでの研究の着目点はシングルマザーに着目したものが多かったようですが、ここでは父親に着目して解析を試みました。カナダのオンタリオ州の健康データ、2001年から2012年の対象者で2016年までの最新死亡データに基づき解析を行っています。
なによりUKではすでに10%近くの扶養義務のある子の親がシングルファーザーであるようです。
シングルファーザーの租死亡率(1000人年あたり5・8人)は、シングルマザー(1000人年当たり1,74人)やパートナーのいる父親(1000人年あたり1 94人)の3倍高かったようです。 シングルファーザーの調整死亡率でも、対シングルマザー(危険率[HR] 2 49、95%CI 1 20-5 15; p = 0.01)および対パートナーのいる父親(2・06,1 ・11-3・83; p = 0・02)となりました。
シングルファーザーとパートナーのいる親グループの死亡率が最も低いことが判明しました。 医師は、社会的な履歴がこれらの高リスク患者を特定するのに役立つ可能性が示されました。 この高い死亡リスクの原因、ならびに臨床および公衆衛生の介入が生活習慣および行動の危険因子をどのように改善できるかを理解するためには、さらなる研究が必要です。
推定される理由は、シングルの男性は、医療アクセスが顕著に低いこと、うつなど精神疾患のリスクが高いことなどが挙げられます。シングルマザーと異なり社会経済性は若干改善されていますが、パートナーを持つ男性、女性と比べると見劣りしています。家庭を持つこと、維持することの重要性をもっと社会として認識、訴えていくこと、保険などでの差別化などよりリスク認識を高めていく必要もあるのではないでしょうか?
しかし、コメンタリーで触れられているように、
世帯内に児童を持つことによる肯定的な影響に注意することは重要のようです。 スウェーデンのWeitoftらが行った調査では、死亡率はシングルファーザーではなく、子供と一緒に暮らしていない父親や子供がいない男性で最も高くなったようです。
これらの比較はChiuらによってなされたものではありませんが、その結果はシングルファーザーが特に脆弱なグループである可能性があることを示しています。 公衆衛生の観点から、ヘルスケアの専門家はこの脆弱なグループに気づくく必要があり、一方で、父親の早期死亡の危険性の背後にある理由を明らかにするためにさらなる研究が行われる必要もあります。
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3/25/2018
木々の緑と海の青、自然環境と自殺の関係
最近のLancet姉妹紙からのご紹介(Helbich et al., Lancet Planetary Health 2018)。
ここでは、Helbichらのグループは、緑色の空間(草、森林、または公園が豊富にある環境)と青色空間(新鮮な海水)からの近接性と、 オランダのほぼ400の自治体で自殺率を比較しました。 彼らは、緑地の割合が中程度以上と低い地域と比較して、緑地環境が多いほど自殺率が低いという統計的な証拠を報告しています。 これとは対照的に、自殺と青色環境の関係や海岸近くに住んでいることの関連性は見つからなかったことを報告しています。
緑地の割合が高い市町村(相対リスク0,879,95%信頼区間0,779~0,991)または緑地(0,919,0.446~0.998)の中程度の割合を示す市町村では、 緑地の少ない自治体に比べて自殺リスクが低かったことが示されました。 緑地の都市性(都市か田舎か、という点)とは影響しなかったようです。 青色環境、沿岸の接近性も自殺のリスクとは関連していなかったようです。 住地域の相対自殺リスクの地理的バラつきはかなりあり、オランダの南(内陸部)はリスクが高いようでした。 かれらの調査結果は、自然環境、特に緑化への曝露が自殺死亡率を低下させる役割を果たすかもしれないという考えを支持する結果となりました。 個々のレベルでの将来の研究によって確認されれば、環境曝露の考慮は自殺予防プログラムを豊かにするかもしれない、との言ですが、本当に何が自殺を減少させているのか、自殺手段のアクセスの容易さや、社会のサポートなど、この時期にはいろいろと考えさせられる研究です。
日本国内の地域差、周囲環境、都市性、年齢分布などとの違いを見てみたいものです。
ここでは、Helbichらのグループは、緑色の空間(草、森林、または公園が豊富にある環境)と青色空間(新鮮な海水)からの近接性と、 オランダのほぼ400の自治体で自殺率を比較しました。 彼らは、緑地の割合が中程度以上と低い地域と比較して、緑地環境が多いほど自殺率が低いという統計的な証拠を報告しています。 これとは対照的に、自殺と青色環境の関係や海岸近くに住んでいることの関連性は見つからなかったことを報告しています。
緑地の割合が高い市町村(相対リスク0,879,95%信頼区間0,779~0,991)または緑地(0,919,0.446~0.998)の中程度の割合を示す市町村では、 緑地の少ない自治体に比べて自殺リスクが低かったことが示されました。 緑地の都市性(都市か田舎か、という点)とは影響しなかったようです。 青色環境、沿岸の接近性も自殺のリスクとは関連していなかったようです。 住地域の相対自殺リスクの地理的バラつきはかなりあり、オランダの南(内陸部)はリスクが高いようでした。 かれらの調査結果は、自然環境、特に緑化への曝露が自殺死亡率を低下させる役割を果たすかもしれないという考えを支持する結果となりました。 個々のレベルでの将来の研究によって確認されれば、環境曝露の考慮は自殺予防プログラムを豊かにするかもしれない、との言ですが、本当に何が自殺を減少させているのか、自殺手段のアクセスの容易さや、社会のサポートなど、この時期にはいろいろと考えさせられる研究です。
日本国内の地域差、周囲環境、都市性、年齢分布などとの違いを見てみたいものです。
3/24/2018
世界の妊娠、中絶事情と経済的豊かさの関係
最近のLancet誌の記事からのご紹介(Bearak et al., Lancet Global Health 2018)。
意思の状態と妊娠率の関係性の推定は、女性と夫婦がどれほど効果的に妊娠を達成できるかを理解し、家族計画プログラムの影響をモニターするために有効活用できる可能性があります。研究グループは、1990年から2014年までのカップル、女性の妊娠の意志とその妊娠から、世界、地域の妊娠率を推定しました。
ベイジアン階層的時系列モデルという新しいモデルでの分布推定を開発したとのことですが対象は 105カ国、出産または妊娠の意思状況に関する298のデータポイントが得られたそうです。
正直この分野に無知な私が意外だったのは、妊娠の推定44%(90%の不確実性間隔[UI] 42-48)が意図されていないものでした。意図されない妊娠率は、1990-94年の15-44歳の1000人あたり64(59-81)から2010- 14年の45(42-56)でこの間に30%(UI 21-39の90%)減少していました。開発途上地域では、15-44歳の1000人あたり77人(74-88人)から65人(62-76人)で16%(UI5-24の90%)減少しました。先進国の意図しない妊娠率の低下は中絶率の低下と一致し、途上国の意図しない妊娠率の減少は意図しない出生率の低下と一致していたとのこと。 2010-14年には、先進国における意図しない妊娠の59%(UI 54-65の90%)、開発途上地域における55%(52-60)が中絶に至っていました。意図されていない妊娠率は、開発途上地域ではまだまだ実質的に高いままであり、女性が意図しない妊娠を避け、そのような妊娠を経験した人々の健康的な結果を確実にするために必要性を訴えています。
単純には、教育の普及、経済の豊かさはこのような意図しない妊娠や中絶を確実に減少させられるはずですが、経済的に裕福であるはずの地域ですらこの程度であり、先進国での妊娠、中絶問題、それに伴う女性の健康、安全を考慮することは今後の成熟する世界にますます必要になるかと思われます。高齢化、成熟社会では出生率が低下し、希少な出生・子育てに対する希少価値、貴重となるはずだからです。今後も一考していきたいです。
意思の状態と妊娠率の関係性の推定は、女性と夫婦がどれほど効果的に妊娠を達成できるかを理解し、家族計画プログラムの影響をモニターするために有効活用できる可能性があります。研究グループは、1990年から2014年までのカップル、女性の妊娠の意志とその妊娠から、世界、地域の妊娠率を推定しました。
ベイジアン階層的時系列モデルという新しいモデルでの分布推定を開発したとのことですが対象は 105カ国、出産または妊娠の意思状況に関する298のデータポイントが得られたそうです。
正直この分野に無知な私が意外だったのは、妊娠の推定44%(90%の不確実性間隔[UI] 42-48)が意図されていないものでした。意図されない妊娠率は、1990-94年の15-44歳の1000人あたり64(59-81)から2010- 14年の45(42-56)でこの間に30%(UI 21-39の90%)減少していました。開発途上地域では、15-44歳の1000人あたり77人(74-88人)から65人(62-76人)で16%(UI5-24の90%)減少しました。先進国の意図しない妊娠率の低下は中絶率の低下と一致し、途上国の意図しない妊娠率の減少は意図しない出生率の低下と一致していたとのこと。 2010-14年には、先進国における意図しない妊娠の59%(UI 54-65の90%)、開発途上地域における55%(52-60)が中絶に至っていました。意図されていない妊娠率は、開発途上地域ではまだまだ実質的に高いままであり、女性が意図しない妊娠を避け、そのような妊娠を経験した人々の健康的な結果を確実にするために必要性を訴えています。
単純には、教育の普及、経済の豊かさはこのような意図しない妊娠や中絶を確実に減少させられるはずですが、経済的に裕福であるはずの地域ですらこの程度であり、先進国での妊娠、中絶問題、それに伴う女性の健康、安全を考慮することは今後の成熟する世界にますます必要になるかと思われます。高齢化、成熟社会では出生率が低下し、希少な出生・子育てに対する希少価値、貴重となるはずだからです。今後も一考していきたいです。
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