お堅いNEJMにしては面白い記事を取り扱っていたのでご紹介します。
国際宇宙ステーション滞在前後の脳機能MRI検査で脳構造の変化を検証したものです。
(Roberts et al., NEJM Nov2017).
研究対象が特徴的であり、得られた結果がおそらく世界唯一、有史以来初めての発見であること以上に何かを類推できることはありませんが、簡単に要約すると、
中心溝の容積の変化、頭頂点におけるCSF空間の容積変化、および脳の垂直変位に焦点を当て、長期滞在者(平均164.8日間)において、宇宙飛行前にくらべ中心溝の狭小化、脳の上方への移動、頭頂点でのCSFスペースの狭小化が生じていたことを示した、というもの。
参考までに比較対象に短期滞在者(平均13.6日間)でも同様に検証している。
脳構造以外にも、重力がほとんどないことで心臓が胸郭上方に移動し心拍機能に影響を与えることや、腎機能・体液浸透圧、電解質代謝、循環器・心機能、骨・筋機能、サーカディアンリズムに対する反応、放射線の影響を受ける代謝、ストレス適応・心理変化、などなど二も影響を受けることが想像され、それぞれの分野で研究が進められているようですが、こういった微小重力が我々人体に与える影響を検討し、対処することは百年、数百年後の宇宙旅行、宇宙移住に備えた科学的対策だなあ、と思うところです。地球上で生まれた生命、30億塩基対の二重らせんDNAが地球外の宇宙に適応できるほどに設計されたかどうか、遺伝子産物の頭脳による道具の発明や方法で対処するかどうか、ぜひ知りたいですな。



