2年ほど前から生殖不能子孫を残すように遺伝子組み換え蚊を野生環境に放出して、マラリアやジカ熱を媒介する経路を遮断するような試みが始まり社会でも議論になったかと思いますが、その技術を少し進めた研究、今回は研究室内での結果を示した論文です。
(Pike et al., Science)(NIHからの紹介記事はこちら)
これまでの同様の試みではその子孫系統、生殖系統を編集して蚊の生態を絶えさせようとしたものでしたが今回は、蚊の持つ免疫システムを過剰発現するように遺伝子編集し、その蚊を実験室内のケージの中で野生の蚊と一緒に共生させてみた、というものです。
マラリア原虫の定着に抵抗するよう、免疫系を活性化させられる蚊を自然交配の中で選択圧が高まり、それぞれの性パートナーから好まれるであろうとした仕組みを使って、ケージ内の蚊は9割以上遺伝子組換え体に置き換えられたというものです。
組換え体の寿命も影響せず、10世代以上にわたってこの状態を継続したとのことで、地域の蚊を一掃してしまう、消滅作戦よりは問題ないように見受けられますが、果たしてこの免疫賦活化した”スーパー”蚊は、人類の未来に影響せずにはおれないのではないでしょうか?同じ発想はペットなどの家畜たちに限らず、人間でも活用できるんじゃないか、と思える一方、その弊害、これまでに存在していなかった生物創造の力を得てしまった人間の科学を十分に考え、検証して使用する必要性を感じさせます。
