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5/28/2017

遺伝子検査のこれから

病気は医師が診断するもの、が現在の従来の医療でしたが、一部の疾患で遺伝子の差異がもとになっていることは、同時に医師から診断のskillを不要とすることになります。
遺伝子原因疾患に限らず、すべての診断が機械的になされるようになるのは前回のAIの発達を待たなければならないかと思っていますが、今現在で患者自身、あるいは患者予備軍自身で診断可能(理解可能)な疾患があることも事実です。
そんな現代の医療環境、医科学発展の中、FDAが23andMe社の Personal Genome Service Genetic Health Risk (GHR) testsの販売(上市)に許可を出したプレスリリースされ、それに反発する記事がJAMA誌のOnline版に出ていたので取り上げて、思案してみたいと思います。(FDAプレスリリースJAMAの記事

パーソナルゲノム解析受託の会社などのまとめについてはこちらの記事にまとまっているようなので参考ください。日本だとこちらを参考までに。

JAMA誌の記事の要旨は、そういった検査の精度や背景疾患などを無視した解釈は患者本人にとっても、検査の結果に直面して発生する治療を引き起こし、医療資源消費の観点で治療者や保険支払者にとっても利益がなく、安易に検査を行うべきでないし、医療専門家の指示のない検査を法的に禁止すべきのような提案をしています。

ただ、一方で検査自体の正確性、疾患&検査結果の解釈を理解できるところまで市民のリテラシーをきちんと掘り起こせるよう、この分野に携わる、開発する方々が取り組めることができるならば、その限られた医療資源消費を患者本人に分散することで必要な治療に集中できることになり、より効率的になるのかと想像できます。むしろ、こういうことをサポートすることができる職業が必要かもしれません。規制当局、医療者、市民(患者)がより深く議論できるような時代が始まるのかなあと感じています。


5/21/2017

AIによる診断、治療適正化、治療法探索の未来

今年に入ってから、日経メディカルやMedical tribune誌で特集が組まれ、よくコラムなどでも取り上げられ始めたAI(人工知能)の医療への貢献を議論する場が多くなってきたが、NEJMなど専門誌では数年前から取り上げられ、具体的な取り組みもやはりUSベースに進んでいる現状がある。(参考、医薬産業政策研究所の特集記事:人工知能の項20ページ~)
大きくは①診断、②治療法の最適化、③新規治療法探索への分析&情報提供を目的にした活用が進められている。
このような時代においては、人間ができることはひたすら上記の活用を目指すべく、機械学習法をより深く、適正に開発していくこと、活用しやすくするための構造化を整備すること、などIT-basedの知識集積が求められていく一方で、そのためにもより科学者としてのスキル(仮説設定、検証法開発、好奇心)とその経験が求められていくことが推察され、その部分に自身も研鑽したいし、後進育成に力を入れていきたいと考える。

少し前のNature誌で、悪性黒色腫(メラノーマ)の診断に機械学習法が取り上げられ、最近のLancet誌で取り上げられていた。(参照記事、Nature誌紹介記事in Lancet)
メラノーマの疾病負担は記事内の記載の通りで、白人で高く、メラノーマ以外の皮膚がんはさらに20倍高いとされている。
”in New Zealand and Australia (50 and 48 per 100000 population, respectively) and projected to increase in the UK (from 17 to 36 per 100000 population) and in the USA (from 29 to 32 per 100000 population) between 2007–11 and 2022–26.1 Non-melanoma skin cancer is up to 20 times more common than melanoma worldwide.”(記事内引用)

寛解を目指す治療法は確立されておらず、他の悪性腫瘍と比べて予後も悪いとされているがステージ初期の発見は予後は良く、早期診断が重要とされている。米国における皮膚がんの費用負担は年間80億ドル(8000億円以上!)を超え、まさにアンメットニーズになっている。
このようなメラノーマの診断に、従来、ダーモスコピーによる画像診断、病理診断をもとに専門医の所見をふまえなされてきたが、画像をベースにしたDeep convolutional neural networks (CNNs)を駆使したComputer-based診断法を皮膚科専門医の診断をもとにValidateを試みたという記事。
Carcinoma, melanomaとの区別を学ばせ、特異性&感受性カーブのAUCで0.94以上を達成しているとなっており、まずまず実用性のあるプログラムを組めてきたと考えられる。
さらに踏み込んで画像取得と診断をスマートホンアプリで行えるようなことも考えて、論文の中でも提案されているが、現在までに有用なアプリケーション、(患者ベースの診断)はまだまだ確立されたとは言い難いようだ(上記のLancet誌紹介記事内および参考記事)。
とはいえ、時代は前進しつつあることを身に染みる報告である。